コロナ禍による在宅勤務や生活スタイルの変化などにより、若い人たちの間でつみたてNISA口座を開設する動きが急増。2024年からは新NISAがスタートした。『新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容から一部を抜粋・公開してきた本連載。その特別編として、なかのアセットマネジメント 代表取締役社長の中野晴啓さんに「投資に関する素朴な疑問や、新NISAを使って具体的にどうお金を増やしていったらいいのか」について、Q&A方式で答えていただいた。新NISAを使って投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、そのポイントをわかりやすく紹介していく。(構成:鈴木雅光、撮影:石郷友仁)
――アクティブファンドは、新規設定されたものを買わないほうがいいと聞きます。どのくらいの期間で、運用成績をウォッチすればいいでしょうか?
中野晴啓 投資信託に詳しい人たちのなかに、こんなことをおっしゃる方がいます。「アクティブファンドは新規設定のものを買わないほうがいいんだ」と。
確かに、ある面では正しいといえるでしょう。アクティブファンドはトラックレコード(過去の成績)のみが、その良し悪しを定量的に判断できる材料だからです。過去の運用成績が良ければ、将来もある程度、高い運用成績が維持できるのではないかと想定しがちです。
でも、ちょっと考えてみてください。過去の運用成績が良いからといって、それが将来の運用成績を確実に担保するものになるのでしょうか。
過去の運用成績は、あくまでも過去の投資環境によってつくられたものです。そして、投資環境は常に変わり続けています。
したがって、過去の投資環境によって生み出された運用成績は、今から未来にかけての投資環境で生み出される運用成績と同じである根拠にはならないのです。
アクティブファンドの過去の運用成績は、
将来のリターンを推測する決め手にならない
端的に言って、過去の運用成績は、あくまで参考データとして捉えてください。
また、過去の運用成績などというものは、いいところだけを切り取れば、いくらでも良く見せることもできます。
たとえば、運用開始時点の基準価額が1万円だとしましょう。それが運用を開始してから1年目に4000円まで値下がりしました。そして、2年目には8000円まで値上がりしたとしましょう。
この運用会社は、ともすれば1年目から2年目までの運用成績を切り取って、「リターンが倍になりました」と言うことができます。確かに4000円だったのが8000円に値上がりしたのですから、率にすれば100%、つまり倍です。
でも、運用開始時点からすれば、この投資信託の運用成績は、プラスのリターンになるどころか、1万円からのスタートが8000円ですから、実に20%ものマイナスなのです。つまり、過去の運用成績を自分たちにとって都合のいいように切り取ることで、いくらでも運用成績を高く見せることはできるのです。トラックレコードを見るうえで重要なのは、なるべく長期間での実績値で把握することと、その間の市場環境を前提に置いての参考値と考えてください。
一方で、過去の運用実績として、成績ではなく、きちんと約束通りの運用方針を守って、規律正しく仕事をしてきたかを判断するうえでは、大いに運用会社やチームの信頼度を測る材料になりましょう。
アクティブファンドを運用するチームの
総合力が問われる時代になる
しかし、日本の投資信託の環境は今、大きく変わろうとしています。
世の中があまりにもインデックスファンド偏重になったので、多くの投資信託会社が「このままでいいはずがない」と考え始めていて、いよいよ本格的なアクティブファンドを新規設定しようとしています。その心意気を、まずは皆さんに評価していただきたいと思います。
もちろん、なかのアセットマネジメントも期待に応えられるような投資信託を2本、新規設定します。
これからは、アクティブファンドを運用するチームの総合力が問われるようになります。そのためには、そのチームが過去、どのような運用実績を残してきたのかについても、開示されるようになるでしょうし、ファンドの運用理念や哲学までも重視されるはずです。皆さん一人ひとりが、自分の大事なお金の運用を託したいと思える運用チームを見つけて、信頼できる先が運用するアクティブファンドを選ぶことが可能になることを期待しています。
【答え】
アクティブファンドの過去の運用成績は、あくまで参考値。むしろ哲学・理念を重視して、誠実で信頼できる運用チームを見つけて投資する。
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
なかのアセットマネジメント:https://nakano-am.co.jp/