頭のなかのモヤモヤを、質問することで整理してあげる

「まさにそんな感じです。何か困ってることがあることはわかるし、何とかしてほしいっていう気持ちは伝わってきます。でも、何をどうしてほしいのかがわからない。それでこっちが困惑していると、その表情を見て諦めるのか、『あっ、いいです。現場のことはどうせわかってもらえないって思ってたので』なんて捨てゼリフを口にして立ち去っていくんです。現場のことはわからないっていうことじゃなくて、あんたの言い方がまずいんだろう、って言いたくなっちゃいますよ」

『きっと頭の中が整理できていないんですね。こんなんじゃ困る、やってられない、といった感情面ばかりが意識の前面に出ていて、何がどう問題なのかっていう理屈面が意識に上っていないんでしょう。本人もちゃんと意識化していない。だからいくら気持ちを訴えられても、何が問題なのかわからない、っていうことになってしまうんでしょうね』

 そこで、話が要領を得ず、イライラする気持ちはわかるけれども、そこはグッとこらえて、混沌とした話の糸のもつれをほぐすような対話を心がけるようにアドバイスした。その際、話の中に出てきた言葉を手がかりに質問しながら、話の流れを明確化していく必要がある。

 たとえば、人の名前や業務についての話が出たら、「○○さんがどうかしたんですか?」「○○さんの言動に何か問題があるっていうことですか?」「△△業務で何かまずいことがあるっていうことですか?」というように、問題のありかについて質問していく。

 そして、○○さんに何か問題を感じているということなら、「○○さんのどういうところが問題だと思うんですか?」「○○さんにどうしてもらったらいいと思いますか?」などと焦点を絞っていく。△△業務に何か問題を感じているということであれば、「△△業務のどんな点が問題だと思うんですか?」「△△業務をどのように改善したらいいと思いますか?」などと焦点を絞っていく。

 要は、本人が頭の中を整理するのを手助けする必要がある。それによって、何が問題なのか、どうしてほしいのか、といったことがはっきりしてくる。本人は、モヤモヤしながら苛立っているわけだが、こうした対話によって、自分が何に苛立っているのかがわかってくる。こっちも、何が問題でどうしてほしいのかがわかってくる。