旧日本軍の失敗から今こそ学ぶべき、現代日本企業の「失敗の本質」とは組織論の名著として名高い『失敗の本質』。日本企業が学ぶべき教訓とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏が、組織論の名著として薦める『失敗の本質』。「現代の組織にとっても学ぶところが多い」というその本のポイントを、及川氏が分かりやすく解説する。

日本軍の組織的欠陥に
「失敗の本質」を学ぶ

 前回記事『新社会人に薦める珠玉の3冊、活字の達人が「人生を変える読書法」を手ほどき』でお薦めした『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(以下、『失敗の本質』)は、私が10年以上、何度も読み返してきた1冊です。

『失敗の本質』はタイトル通り、第2次世界大戦中の日本軍の組織について、戦史と組織論を専門とする計6名の研究者が著した研究の書。ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦を取り上げています。初版は1984年で、ダイヤモンド社から発行されました。

 組織としての日本軍の失敗を、現代組織の反面教師として活用することを目的に書かれた本書は、大東亜戦争(本書では戦場が太平洋地域に限定されていなかったという意味で、あえてこの呼び方が使われています)を通じて明らかになった非合理的かつ非効率な行動の背景に組織的な欠陥があり、これが日本の敗戦を招いたと論じます。

 著者の1人で組織論を専門とする経営学者の野中郁次郎氏は、本書執筆のきっかけについて後年、「日本企業のケーススタディをもとにした研究を進めるうち、成功例だけでは一面的になると失敗例を探したが、企業からの協力が得られなかった」と振り返り、「日本軍の失敗の研究ならできるのではないか」との助言を得て、調査を進めるために防衛大学校へ移籍した経緯を明かしています。

 今の現役世代にとっては第2次世界大戦は遠い過去、歴史の中の出来事にすぎないかもしれません。しかし、この本は純粋に読み物としても面白く、幅広い読者にお薦めできる書物です。