YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」で、メンタルの病気について発信し続けている、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介氏。インタビュー第9回では、つらい時にメンタルを回復させる行動について話を聞いた。本記事では、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の発売を記念して、逆にメンタルが削れる避けた方がいい行動について話を聞いた。【第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回第8回第9回の記事はコチラ】

【ギャンブル依存症】「何かに依存してしまう人」の意外な共通点、ワースト1【精神科医・益田裕介氏インタビュー(10)】自分の「つらさ」を言語化できるだろうか(Photo: Adobe Stock)

楽しかったらお酒を飲まなくてもいい

――メンタルが削れる行動を3つ挙げるとしたら何でしょうか?
益田裕介(以下、益田) 削れるのは、やっぱりアルコールです。飲み過ぎは良くないんです。お酒を飲むと、睡眠とか回復の質を下げちゃうから脳の回復が遅れるんです。「疲れ」って脳の炎症反応だと思うんだけど、その炎症反応を取り去ったり、不純物を取り除く作用が落ちちゃうんじゃないでしょうか。

――疲れているとお酒に頼ってパーッと楽しみたい人も多いのではないのでしょうか
益田 そもそも、お酒を飲んでると肝臓の働きが悪くなります。肝臓って傷や炎症を治すためのタンパク質をいっぱいつくっているので、余計に回復が遅れてしまう。楽しかったら飲まなくてもいいと思いませんか?

ギャンブル依存症はストレスへの条件反射

――確かにそう思います。メンタルを削る行動2つめはなんでしょうか?
益田 2つめはやっぱり、ゲームとかスマホです。依存行為だから、大体後悔しちゃいますよね。やらなきゃよかったみたいな。そういうのはやっぱり、メンタルが削れちゃいます。

――最近、ギャンブル依存症が話題になりました。ギャンブルに依存してしまう原因は何なのでしょうか
益田 原因はいろんなものがありますが、結局、ストレスがたまったらギャンブルやパチンコをするというのが条件反射になっちゃっているんです。だから、ダメだと分かっていてもギャンブルをやって後悔したりします。

――条件反射でギャンブルをしてしまうとは、どういうことなのでしょうか
益田 梅干しを見たらよだれが出るじゃないですか。それと同じで、一度その回路が繋がってしまうと、ストレスがたまったらギャンブルしたいという条件反射ができてしまうのです。それを止めるのは、梅干しを見てよだれを止めろと言ってるのと一緒だから、かなり難しいんです。

――治療はどのようにされるんですか?
益田 基本的には、もうギャンブルをやらないだけなんです。例えばパチンコに依存してしまう人はパチンコをやらない、スマホでもパチンコゲームをしない。ギャンブルをやらなければ、だんだん依存系の回路ってなくなって、忘れていくんです。だから、とにかくやらない。そして、ストレスが溜まったときにほかのことで解消できるようにするのが重要です。

何かに依存してしまう人は「言語化」がヘタ

――何かに依存してしまう人の共通点などはありますか?
益田 ギャンブルに限らず何かに依存してしまう人って、言語化する力が弱いのです。感情を表現したり、誰かに悩みを相談したりとかが難しい。だから、自分の感情や考えを言葉にするトレーニングをしつつ、治療をしていきます。寂しかったら、寂しさを言語化する、そして友達をつくるとかですね。

――メンタルが削れる行動、3つめを挙げるとしたら何でしょうか?
益田 ずっと同じことをぐるぐる考えちゃう「ぐるぐる思考」でしょうか。病む人って大体そうなんだと思います。「あの人は私のことを嫌ってるかもしれない」とか、そういうことをぐるぐると考えてしまう。

――「ぐるぐる思考」はどうやったら止められるのでしょうか?
益田 マインドフルネスで、呼吸に集中することで思考を止めてあげる。呼吸に集中することは、ぐるぐる思考を止める訓練なんです。

――そのほかに、例えば避けたほうがいいものなどありますでしょうか
益田 避けたほうがいいものを上げるとキリがないけど、エナジードリンクは良くないですね。エナジードリンクって、カフェインを摂ることで疲れをごまかしちゃうんです。それで、適切に休まなくなっちゃう。借金の先送りみたいになっちゃいますよね。疲れたときは「疲れた」と感じて、落ち込んで寝てるくらいのほうがいいんです。

(取材・構成 書籍編集局 工藤佳子)