傷病手当金は貧困を防ぐ
健康保険の重要な給付

 そもそも、健康保険は労働者の福祉を向上させ、彼らの生活を安定させることで、急増していた労働争議をなくし、国家産業を発展させるために1927(昭和2)年に創設されたものだ。制度には、労働者が病気やケガをして働けなくなっても、貧困に陥らないようにする防貧機能が期待されている。

 そのため、病気やケガをした時にお金の心配をしないで医療を受けられるようにする「療養の給付」と同様に、療養中の生活費を保障する「傷病手当金」も重要な給付に位置づけられている。

 今回見てきたように、傷病手当金をもらえるのは4つの要件を満たしている人で、「労務不能の状態」であることを証明する医師の診断書(意見書)が必要だ。病気やケガをすれば誰でも自由に請求できるというものではないが、要件にあてはまれば、入社間もない新社会人でも給付を受けられる。

 病気やケガをしないで平穏な社会人生活ができるに越したことはないが、突然の事故でケガをしたり、人間関係に悩みメンタルに支障を来したりする可能性は誰にでもあるものだ。その時は、すぐに仕事を辞めたりせず、傷病手当金のことを思い出してほしい。

 傷病手当金は、自営業者やフリーランスの人などが加入する国民健康保険には備わっておらず、企業や団体の健康保険に加入している人しか利用できないものだ。せっかく頑張って就職活動をしたのだから、万一の時に使わない手はない。

 内臓疾患や感染症など身体の病気、事故によるケガはもちろんのこと、精神的な疾患での休業も給付の対象で、仕事を休まざるを得なくなった時には強い味方になってくれる。そして、十分に療養して元気になったら、再び社会で活躍してくれる人材に成長してくれることを願いたい。