カタリーナ 「副業を推進している会社なら、いくらもらっているか会社に知られても問題はないはずよね?」

平居 「それはそうですけれど、ちょっとやりにくいというか」

カタリーナ 「ただ、あなたが副業先の代表取締役になったとしても、役員報酬を受け取らなければ、話は別。でも、ボランティアというわけにはいかないでしょう?」

平居 「副業は金のためだけじゃありませんが、引き受けるならそれなりの報酬は欲しいですね」

カタリーナ 「社会保険の話に限らず、代表に就任するかどうかという大きな選択だから、さまざまな角度からじっくりと検討した方がよさそうね」

平居 「そうします。知らないことってたくさんあるものですね」

<カタリーナ先生からのワンポイント・アドバイス>
●同時に2カ所以上の事業に勤務する場合、それぞれの会社で社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件を満たすときは、両方で社会保険に加入する必要がある。加入要件は企業規模によって異なる。2024年10月以降、厚生年金保険の被保険者数が常時51人以上の事業所は、短時間労働者も(1)週の所定労働時間が20時間以上、(2)所定内賃金の月額が8.8万円以上、(3)2カ月以上の雇用見込がある、(4)学生でない、の4要件を満たすと社会保険に加入しなければならない。

●法人の代表者や役員については、「法人から、労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得」(昭24. 7.28 保発74)するものとされており、社会保険の適用対象となるかどうかは、法人との使用関係を認めうる実態により個別に判断される。

●同時に2カ所以上の事業所で社会保険の加入要件を満たした場合、いずれか1つの事業所を主たる事業所として選択し、管轄する年金事務所または保険者等を決定する必要がある。

●健康保険証は、被保険者本人が選択した事業所を管掌する保険者から発行される。なお、現行の健康保険証は2024年12月2日以降に廃止され、今後は「マイナ保険証」を基本とする仕組みに移行される。

●それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により、標準報酬月額が決定される。この標準報酬月額に厚生年金保険料率、選択した事業所の健康保険料率(40歳以上は介護保険料率も)をかけた保険料額を、それぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分して保険料が決定される。通知はそれぞれの会社に届く。

※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。

(社会保険労務士 佐佐木由美子)