6両から5両への減車で
懸念される混雑率の上昇
しかし、東武鉄道の輸送人員は他の関東大手私鉄と比較しても回復傾向にあり、2023年度第3四半期(10~12月)の輸送人員は、定期が2018年度同期比で12%減、定期外が3%減だった。
現在公表されている最新データである2022年度の野田線各駅の乗降人員を見ると、三大ターミナルである大宮は14%減、柏は9%減、船橋は7%減、伊勢崎線と合算される春日部を除く全駅の合計では9%減だった。
2022年度の全線の輸送人員は、2018年度比で定期が16%減、定期外が10%減だったので、各駅の乗降人員もさらに回復していると思われる。
6両から5両への減車は約17%の輸送力削減になるので、輸送人員の減少率を上回り、混雑はコロナ前より悪化する計算になるが、問題はそう単純な話ではない。
鉄道が輸送力を最大に発揮するのは朝ラッシュである。その主要顧客は通勤・通学定期利用者だが、国土交通省が毎年行なっている混雑率調査を見ると、コロナ禍以降、いずれの路線もピーク1時間輸送量の減少率は、定期輸送人員のそれを上回っているのである。
2019年の野田線の混雑率は大宮方面が124%、柏方面が132%、船橋方面が139%だったが、2019年から2022年で輸送量は、大宮方面が26%、柏方面が32%、船橋方面が11%減少。その結果、2022年の混雑率は大宮方面が98%、柏方面が90%、船橋方面が112%となった。
大宮、柏方面は定期全体の減少率を大きく超えており、定期利用の減少とは別に、ピークシフトも進んでいることが分かるが、やはり、混雑率がキーワードになるのは間違いなさそうだ。
車両更新は数年がかりで準備するため、80000系の導入計画自体はコロナ前から存在したのだろうが、コロナ前の野田線を5両化すると、三大都市圏通勤路線の混雑率の目安である150%を超えてしまう。「5両編成の新型車両導入」が発表されたのが2022年4月のことなので、5両化の決定はコロナの早い段階でなされたはずだ。
利用が最も少なかった2020年の混雑率は大宮方面が91%、柏方面が84%、船橋方面が101%だったので、輸送力を17%削減して計算すると、混雑率はコロナ前から20ポイント近く下回る102~121%に収まる計算だ。2022年に当てはめると118~136%となり、さらに利用が回復していることを考慮すれば、コロナ前と同等か上回る混雑になりかねない。