新党を立ち上げ、選挙の「台風の目」となった曹国

 一方、対照的だったのが、自ら立ち上げた「祖国革新党」の党首を務める曹国(チョ・グク)氏である。今回の総選挙の「台風の目」と注目を浴びた曹国氏は、実際に比例代表で「国民の力」「共に民主党」に次いで第3位の12議席を獲得し、その存在感を見せつけた。

 そんな曹国氏も前述の尹美香氏同様に、文前政権時代に鳴り物入りで法務長官に就任した、文在寅の同志と思われていた人物だ。しかし就任直後から子どもたちの不正入学に絡む私文書偽造などの疑惑が報道され、結果的に2カ月余りで法務長官を辞任した。現在も裁判は進行中で、今年2月にも有罪判決が言い渡されている。

 しかし曹国氏は、昨年から著書を出版したり、政権に関連した発言を積極的に行ったりと、国会議員総選挙を見据えて動いていると目されていた。曹国氏の場合、左派によくある感情任せに相手を口撃するといった姿勢ではなく、政権批判を行うにも淡々と理路整然と話すので、知的な印象がある。

 そうした意味では、今回の選挙は曹国氏のイメージ戦略が功を奏した形と言ってもいいだろう。しかし、いくらいいことを言っても、曹国氏が自らの立場を利用して複数の不正を行い、それに対して有罪判決が下されていることは動かぬ事実である。結局、曹国氏も李在明氏同様、自らの罪を政権や右派批判にすり替えて声を大きくすることで国民を扇動するというやり方は変わっていない。文前政権以降、その流れに国民の意識に変化の兆しが見られたかと思えたのだが、今回の選挙でやはりそれもまだまだであったことがわかり、何とも残念である。