米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げの有無や時期が議論される中で、もう一つ重要な議論が展開されている。それは、政策金利が長期的にどの程度の水準で落ち着くのかという議論だ。問題となっているのは中立金利だ。中立金利とは、貯蓄の需給を均衡させ、安定した経済成長とインフレをもたらす金利を指す。過去40年間、そして特に2008年の金融危機以降、エコノミストやFRB高官は中立金利の推計値を徐々に引き下げてきた。こうした見解は、債券利回り、住宅ローン金利、株価など、無数の資産に反映された。しかし現在、中立金利には上昇する理由があり、それによって資産価格全般が変動しかねないと指摘する向きもある。「r*(アールスター)」とも呼ばれる中立金利は直接観測することができず、推測するしかない。FRBは5年前、政策金利であるフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標を2.4%に引き上げたが、その後、経済成長とインフレに低迷の兆しが見られるとして利下げを開始した。つまり、中立金利が2.4%程度か、それよりも低いことを示唆したのだ。