10年連続で算数オリンピック入賞者を輩出している彦根市発の知る人ぞ知る塾「りんご塾」。天才を生み出すそのユニークな教育メソッドを、塾長の田邉亨氏が初公開した書籍『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(ダイヤモンド社刊)が、このたび発売になった。本書を抜粋しながら、家庭にも取り入れられるそのノウハウを紹介する。

小学校のテストでラクラク100点を取ってくる子が心配な理由Photo: Adobe Stock

「ほとんど毎回100点」はいいことなのか?

 小学校低学年だと、算数のテストで100点を取ってくるお子さんも多いでしょう。
 けれども、「特に苦労している様子はないから、今はまだ何もしなくて大丈夫」と考えるのは早計です。

 想像してみてください。ほとんど毎回100点を取れていたら、授業中、お子さんはどんな気持ちになるでしょうか?

 賢いお子さんですから、先生が黒板に書いたことはすぐに理解して「あ~、はいはい。そういうことね」と、受け身の姿勢で時間を過ごしているのではないでしょうか。そして、テストはまんまと100点です。なんの問題もないので、臨む態度に疑問を持つことはありません。「受け身で大丈夫」という考えが、無意識のうちに刷り込まれていきます。

 けれども、私は思います。

「どんなことでも、努力して自分が能動的につかみに行って、やっと手に入るものだと教えなくてはダメだ」と。

小さい頃から「努力」と「結果」をセットで体験させる

 なぜなら、そうしないと「賢いだけ」で終わる可能性が高いからです。
小学生時代にものすごく勉強ができたトップ層の子どもたちは、学生の間は優等生として生きていけることが多いです。

 でも、本人的にはあまり努力していないから、そこに価値を見いだせません。人間は、自分が努力せずにできたことに価値を見いだせないのです。そのため「勉強なんてできても仕方がない」と言って別の世界へ行き、そこが合わずに転落していったり、自分の能力の生かし方がわからなくて埋もれてしまったりすることがあります。かの福沢諭吉も言っているように、「活用なき学問は無学に等しい」のです。

 だから、低学年のうちに「努力」と「結果」をセットにして体験させていくことが大事。受け身ではなく能動的に臨んで結果を勝ち取るからこそ喜びが得られるし、自分の能力を実社会で役立てていこうという積極的な気持ちも生まれるのです。

*本記事は、『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(田邉亨著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。