今週は「児童福祉週間」、学校での逆境体験に注目Photo:PIXTA

 毎年、5月5日からの1週間は子供の健やかな成長を考える「児童福祉週間」だ。

 子供時代の虐待体験は成人後も心身に影を落とす。ざっと挙げただけでも心血管疾患、生活習慣病、がんの発症リスクであり、心の健康への悪影響は言わずもがなだ。

 家庭内に限らず、学校での虐待体験(逆境体験=ACE)も生涯にわたり影響する。

 公益社団法人「子どもの発達科学研究所」は、教師による虐待やいじめ体験など、学校でのACEに注目。成人後のメンタルヘルスと社会生活に及ぼす影響を調べている(調査期間2021年10月)。

 対象はインターネットパネル調査に登録している20~34歳の成人4000人で、冷やかしを避けるトラップ質問に反応した1人を除く3999人(平均年齢27.2歳、男女各49.4%、その他1.2%)の回答が解析された。

 家庭内のACEについては、「親による」身体的な虐待、言葉の暴力、性的虐待など個人的な5項目とアルコール依存症やDVなど機能不全家庭に関する5項目が用意された(1項目1点)。

 学校ACEは、家庭ACEの個人的5項目を「親」から「学校または幼稚園の先生」に置き換え、さらに「同級生」と「上級生」によるいじめ被害の2項目で構成。

 学校ACEに着目すると、回答者の半数以上は一つ以上の学校ACEを持ち、スコアが1点増加するごとに、抑うつ/不安症状リスクが44%増加していた。

 6カ月以上、他者との交流を伴う外出をしない「社会的ひきこもり」との関連では、学校ACEのみが有意に関係し、1点増えるごとにリスクが29%増加、教師関連では同じく23%増、いじめ関連では37%増と単独でも有意に関連していることが明らかになった。

 この調査からは、学校での虐待は家庭のそれより頻繁に起こっていることも示唆された。

 安心して学べるはずの環境が、逆に子供たちへ生涯続く危害を加えている可能性があるわけだ。教育環境の変革は急務だろう。

 教育関係者のみに責を負わせず、大人一人ひとりが当事者として考えていかなくてはならない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)