OJT完全マニュアル。最初のステップは「OJTの土台づくり」です。ここをゆるがせにすると、OJT指導はうまくいきません。部下と目標を共有し、信頼関係を築く。それができて初めて、成長につながる指導が可能になります。(構成:ダイヤモンド社人材開発編集部 間杉俊彦)

OJT指導の7ステップを
おさらいします

 前回は、OJTのあり方についての全体像について示しました。具体的には、その手順を次の7つのステップで解説しています。

ステップ1:「OJTの土台づくり」

ステップ2:「目標設定」
…バランスのとれた目標を腹落ちさせる

ステップ3:「計画立案」
…全体を見せ、段取りさせて、仕事を任せる

ステップ4:「実行」
…声をかけ、しっかり聞き、共有する

ステップ5:「困難への対応」
…部下中心に問題を「見える化」し、支援する

ステップ6:「評価」
…適切な形で褒めて、叱り、振り返らせる

ステップ7:「学びの抽出」
…ヒントや問いかけで学びを引き出す

 今回から、このステップ別に解説をしていくことにします。

 まず、ステップ1:「OJTの土台づくり」です。

 指導の前提として、信頼関係を築き、目標を明確にすること。そこから本格的な指導がスタートします。

 以下では、仮想の状況設定(課題提示)をし、それに対する対処法を示します。

 

状況1
OJTについて、いまひとつ本気になれない

対処法1
OJTでマネジャーに求められる能力の一つである「目標共有力」を強化する

 

 組織がOJTに期待しているのは、トレーニーの成長だけでなく、トレーナー・トレーニー双方の成長です。トレーナーはOJT=育成経験を通じて、マネジャーに求められる「目標共有力」を強化することができます。「目標共有力」とは、ビジョンや目標を明示し、それを組織に浸透させ、メンバーを巻き込む能力です。

 日本企業12社の課長・部長を対象とした調査によれば、優れたマネジャーは経験を通して「情報分析力」「目標共有力」「事業実行力」という3つの能力を修得していた、という結果が出ています。

 このうち「目標共有力」を高めている人は、「部下を育成した経験」を積んでいる人であることがわかっています。

[指導例]:部下がまったくついてきてくれなかった経験から、「マネジャーとしてどうありたいのか、どこを向いて仕事をしているか」を明確にする必要があることを学んだ。

 上記のマネジャーは、OJTを通して、マネジメントの基本である「目標を部下と共有する能力」を身につけています。