マンション1棟は買えないけれど、ちょっと不動産にかかわってみたいという人は、「REIT」という不動産の投資信託があります。REITとは「Real Estate Investment Trust」の略です。日本の不動産を扱うREITはJapanのJをつけて「J-REIT」といいます。
今回は、「手軽に不動産投資を始めるならREITがオススメ」というテーマでお話しします。
REITは証券会社で売買が可能で、リアルに多額の借金をしなくてもいいです。1つの不動産を買うよりも詰め合わせセットでリスク分散もできます。日本は今後本格的なインフレになり、不動産価格ももっと上がっていきそうです。手軽に不動産投資を始めるなら、REITを買ってみるといいでしょう。
企業の株と、企業名のREITとの違いは?
REITには、「オフィスを集めたREIT」「リゾートを集めたREIT」など、いろいろな種類があります。中には星野リゾートREIT、イオンREIT、積水ハウスREITなんていうのもありますよ!
企業名が付いたREITと、その企業の個別銘柄とはどう違うか。たとえば、イオンの株を買うというのは、イオンの経営手腕や業績に期待して買うことになります。
一方、イオンREITを買う場合は、イオンが持っている不動産の価値を評価して買うことになります。会社の業績の価値なのか、会社が持っている不動産の価値なのか、その違いだと覚えておけば大丈夫です。
企業名のREITの価格は、普通の株より高い傾向にあります。
株は株価があまり高くなりすぎると買いにくくなるため、株式分割したりしてある程度値段を抑えたりしますが、REITはまだ買う人が少ないので値段が高めなのかもしれません。私自身は、資産の中での不動産の割合が過多なのでREITは持っていませんが、最近買おうと思ったビルの持ち主がREITでした。
このようにREITは実際に不動産を買っていることもあります。相手が個人ではないので、お手紙を書いて誠意を伝えようとしても通じないんです。交渉は非常に淡々と、超ドライに進みました。もしかしたら今後、交渉相手がREITであるケースが増えてくるかもしれません。
US-REITでアメリカの不動産に分散投資できる
J-REITが日本のREITであるように、US-REITはアメリカの不動産のREITです。アメリカで不動産を買いたいと思っても、そうそう手が出るものではありません。金額も相当高いし、値動きも日本に比べると大きいです。そんなときは、少額で投資できるUS-REITを検討してみてはいかがでしょうか?
アメリカの不動産は歴史ごと評価される
アメリカの不動産を見ていて面白いなと思うのは、不動産価値の概念が日本とは違うことです。アメリカでは「不動産の歴史ごと買う」という感覚があり、中古になればなるほど不動産の価値が出てきます。
そのため、以前に誰が住んでいたのかをすごく気にするんです。特にビバリーヒルズみたいなセレブが住む街では、「前にこんな映画監督が住んでいた」「あの有名な女優さんが住んでいた」など、不動産の歴史がまるっと価格になって反映されるんですよ。
日本はどうかというと、建物の不動産価値は経年劣化していく一方で、その資産価値はいずれゼロになります(つまり、土地だけの価値になります)。こうした背景には、地震が多い、台風が多いなど、自然災害が多いことがあるのかもしれません。
アメリカはそうした自然災害が少ないので、建物の資産価値を長く保つことが可能なんですね。これはヨーロッパも同様で、300年前の建物がいまだに現役で高値になっています。もし不動産のストーリーも買いたいという人は、分散投資にUS-REITを入れておくのもいいかもしれませんよ!
退職金で投資デビューはハードルが高すぎる
投資を始める人で多いケースが、「退職金を投資につぎ込み、大損してしまった」という人です。社会人のプロとして立派に勤め上げた人たちが、なぜそんなことになってしまうのか、不思議ですよね。
人生で初めて何千万円というお金を急に手にして、どう扱っていいのかわからなくなって、誰かに任せたくなるんだと思います。すると、今までずっと取引をしてきて、自分が信用できると思っている銀行に相談するしかありません。
その結果、言葉巧みに手数料の高い商品を買わされるなどして、なけなしの退職金を使ってしまうのです。「退職金で運用しませんか?」などと銀行が言って来たら、「手数料を取ろうとしてるな」と思って間違いありません。
あなたが退職するのはまだ先の話だと思いますが、大事な退職金を守るためにお金の勉強を続けてください。ご両親が退職するときも、退職金の使い方のアドバイスをしてあげてくださいね。
自分に合った資産の「コア・サテライト」をデザインする
投資をするときは、自分が取れるリスクに応じて、「コア資産」と「サテライト資産」の組み合わせを調整していきましょう。「コア資産」とは、自分の資産の核(コア)となる安定的な資産です。債券や不動産など、中長期で運用していくもので、債券の金利や家賃収入などが安定収入となります。イメージとしては“守りの資産”です。
一方サテライトには、「衛星」という意味があります。自分のコアとなる資産の周囲に、「サテライト資産」となる株や投資信託、ETFなど、値動きが大きいものを配置していきます。リスクが大きい分、資産の伸びしろも大きいです。こちらは“攻めの資産”というイメージですね。
ハイリスク・ハイリターンか、それともローリスク・ローリターンか。もしあまりリスクを取りたくないと思うなら、資産の8割を債券などのコア資産にして、残りの2割を株型の投資信託などサテライト資産にしておく。そうすればそこまで資産が減るリスクを負わずに、投資ができるのではないかと思います。
年代によってコアとサテライトの配分を変える
とはいえ、若いうちは8割もコア資産にしてしまうと、全然お金が増えていきません。時間がたっぷりあるという最強の強みを生かして、むしろ8割をサテライト資産に回して攻めまくるくらいでいいでしょう。
また、そもそも論になってしまいますが、投資でお金が増えていくスピードよりも自己投資をしてスキルを上げて稼ぎ力をつけるほうが早くお金が増えていきます。だからこそ、若いうちは「稼ぐ」と「増やす」を同時にやるべきなのです。
一方、60代、70代になってきたとき、サテライト資産ばかりを持っているのはハイリスクです。時間が味方してくれないので、何かで資産が大きく減ってしまっても、リカバリーできないんですよね。その場合は株から債券に移行するなど、コア資産を8割くらいに増やしてリスクを抑える必要があります。
富裕層の方も、投資で資産を大きく増やすというより資産の保全が目的になりますので、債券で安定した運用をオススメしています。
今回は、「手軽に不動産投資を始めるならREITがオススメ」というテーマでお話ししました。これから不動産投資を始めたい人は、「US-REITでアメリカの不動産に分散投資が可能」「自分に合った資産の『コア・サテライト』をデザインする」これらのことを、ぜひ頭に入れておいてくださいね!
●八木エミリー 投資家&事業家。野村證券では最年少講師に。26歳で辞めた後は、不動産投資を開始し、7棟の不動産を所有(購入額7.5億円)。現在はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として中立の立場で金融商品のアドバイスなども手掛けている。経済的自立を目指すお金ビギナーを救う活動を「マネ活」としてメルマガ配信などを行なっている。著書に『今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!』『元証券ウーマンが不動産投資で7億円』(ダイヤモンド社)など。
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