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1973年の「第一次オイルショック」のときは、
「トイレットペーパー騒動」が勃発するなかインフレが加速!
私は中学時代を岐阜県の大垣市で過ごしました。中学1年生のある日、学校から家に帰ると玄関にうず高くトイレットペーパーが積み上げられていました。「なんだい、これ! 邪魔で家に上がれないじゃないか!」と文句を言ったら、そのトイレットペーパーの向こうから母が「生活防衛よ。アンタ、今、日本中でトイレットペーパーがなくなって大変なことになってるの、知らないの?」と答えました。それは1973年の出来事で、いわゆる第一次オイルショックの真っ最中の珍事だったのです。
今、アメリカの消費者物価指数は前年同期比+7%で上がっており、過去39年で最悪の上昇率となっています。それはつまり、投資戦略を考えるうえで我々が参考にしなければいけない過去の事例は、決して前回の利上げ局面である2017年などではなく、今と同じように高インフレにアメリカが苦しんだ1970年代であるべきだということです。
「ニフティ・フィフティ」と「GAFAM」など、
1970年代と現在の株式市場は酷似した状況に!
そこでまず、1970年代の物価がどのように推移したのか見てみましょう。
1970年代初頭は、インフレを気にする米国民は皆無でした。ところが、1972年にソ連(今のロシア)が、天候不順のため農作物が不作となったことから、国際市場で穀物を買い漁りました。その関係で1973年からインフレが始まり、連邦準備制度理事会(FRB)は2月から利上げを始めました。
当時、米国の株式市場は「ニフティ・フィフティ(Nifty Fifty:いかした50銘柄)」と呼ばれる、ごく一握りのグロース株がマーケット全体をぐいぐい引っ張っていく様相を呈していました。しかし、その陰で他の小型株はずるずると値を切り下げ、勝ち組と負け組がハッキリ分かれる二極化を起こしていました。
これは、ちょうど去年までの米国株の相場が、GAFAM(アルファベット[グーグル]、アップル、メタ[フェイスブック]、アマゾン、マイクロソフト)にエヌビディアとテスラを加えた7銘柄によって牽引された様子と酷似しています。
1973年に利上げが始まるとニフティ・フィフティ株は次々に暴落し、グロース株の恐ろしい弱気相場が到来しました。下のグラフの1973年と1974年がその時期に当たります。
そのため、私は「ひょっとすると2022年の相場は、1973年のような酷いことになるんじゃないか?」と心配しています。なぜなら、あの時と同様に、FRBがいよいよ3月から利上げを開始するからです。
1970年代のインフレ時に小型グロース株が大暴落したように、
2022年も「何を買っても儲からない相場」になる可能性が
FRBによる利上げから1974年までに、小型グロース株の多くは高値から-95%も暴落。また、REITのチェース・マンハッタン・モーゲージは70ドルから4ドルへと暴落しました。そして、1973年1月11日にNYダウ(ダウ工業株価平均指数)がつけた高値は、1982年になるまで更新できなかったのです。
もちろん、当時は第四次中東戦争(ヨムキプル戦争)や、それに伴う石油輸出国機構(OPEC)の石油禁輸措置といった特殊事情があるため、現在の状況と比較する場合、それらを差し引いて考える必要があると思います。
しかし、今はウクライナ情勢が緊迫しており、もし戦争となれば欧州連合(EU)がロシアの石油や天然ガスをボイコットすることが予想され、国際市況が一変するリスクもあるのです。
1973年に限って言えば、コモディティ価格の高騰で石油株や金鉱株が大相場になりました。しかし、高インフレが引き起こした不景気によって1974年に弱気相場が一層ひどくなると、石油株や金鉱株ですら値を消し、1929年の「暗黒の木曜日」以来となる最悪の“何を買っても儲からない相場”となったのです。
2022年の場合、年初からのS&P500指数の下げ幅は−7.0%、ナスダック総合指数の下げ幅は−12.0%となっています。一見すると下げ過ぎのように見えるため、「もうすぐ上昇に転じるかも」と期待する読者もいるかと思いますが、今のインフレ環境が過去39年で最悪であることを考えれば、ここは慎重に相場を見極めたほうが良いということがおわかりいただけると思います。
【今週のまとめ】
1970年代に起こった株式市場の惨状を参考に、
利上げによって起こりうる相場の大変動を乗り切ろう!
現在のインフレは、1970年代と同じような酷さです。1970年代の株式市場のパフォーマンスは悲惨で、特にグロース株は恐ろしい暴落を演じました。石油株や金鉱株といった「インフレで恩恵をこうむるセクター」だけが上ったのです。
もちろん、歴史はそっくりそのまま繰り返されるのではなく、今回のパターンは当時と異なるものになることも想定すべきです。しかし、「相場が崩落する理屈は、大筋として当時も今も余り変わらない」ということは覚えておくといいでしょう。
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