2014年にスタートしたNISA(ニーサ・少額投資非課税口座)。口座開設数は16年3月末時点で1012万口座(7月8日金融庁発表)に達し、国民約13人に一人がNISA口座を開設している計算になる。とは言え、口座を開いただけで利用していないという人もいるのでは? 非課税投資枠が拡大されたり、子供向けの新制度が創設されたり、毎年少しずつ制度が変わるNISAを上手に活用できるように、NISA口座のメリット・デメリットを改めて押さえておきたい。
NISA口座は一人1年1口座。
非課税枠は年間120万円、最大600万円まで
まずは、NISAとは何なのかを簡単に見ておこう。
NISAはそもそも、国が推し進めたいと考えている「貯蓄から投資へ」の流れを支援するための制度。投資による利益を非課税にすることで、これまで投資をしたことがなかった人にも「やってみよう」と思わせて、個人投資家の裾野を広げるのが狙いだ。
2016年版のNISA制度の主な内容は、以下のとおりだ。
1.1年に120万円までの新規投資の利益や配当金・分配金が全額非課税
2.非課税投資枠は最大で600万円(120万円×5年分)
3.投資対象は、国内外の株式と公募株式投信(金融機関によって取扱い商品は異なる)
4.非課税期間は投資した年を含めて5年間(次の非課税期間への繰り越しも可)
5.現状、NISAで新規投資ができるのは2023年まで
6.利用にはNISA口座が必要で、その年に開設・利用できるNISA口座は一人1口座のみ
7.NISA口座を開設できるのは20歳以上のみ(0~19歳のためには別途ジュニアNISA制度が創設された)
では次に、NISAのメリットである1.の「1年に120万円までの新規投資の利益や配当金・分配金が全額非課税」の部分について、もう少し詳しく見ていこう。
譲渡益と配当金・分配金が
全額非課税になるのがメリット
NISAで投資できるのは年間100万円までだが、投資に対する利益や配当金、分配金については制限なく非課税になる。これがNISAの唯一にして最大のメリットだ。
現在、特定口座・一般口座では、株式や投資信託の利益に対して20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税)が課税される。
具体的な数字で比べてみよう。たとえば、株式を120万円分購入して、値上がりにより200万円になった時点で売却した場合。
●NISA口座
200万円-120万円=譲渡益80万円(非課税なので全額もらえる)
●NISA以外(特定口座・一般口座)
(200万円-120万円)×(100-20.315)%=税引き後63万7480円
●その差
80万円-63万7480円=16万2520円!
譲渡益が80万円の場合は、NISAとNISA以外で受け取り金額になんと16万円以上も差がつく。かかる税率は常に同じだが、利益の金額が大きくなるほど税金のインパクトも大きく感じられるだろう。
NISA口座で投資した場合の非課税期間は原則5年で、売却はその間、いつでも自由に行なえる。また、5年経ってまだ保有していたい場合には、翌年のNISA枠に引き継ぎ(ロールオーバー)もできるし、通常の特定口座・一般口座に移管することもできる。
損益通算や損失繰り越しの不可などがデメリット
NISAのデメリットには何があるだろうか。
【デメリットその1.損益通算ができない】
株式や投資信託の利益と損失は、特定口座や一般口座であれば相殺が可能で、損益通算によって税金を減らせる。しかし、NISA口座で投資した分に関しては、この損益通算が一切使えない。
こちらも、具体的に確認しよう。たとえば、A社の株式では100万円の利益が上がったが、B社の株式では40万円の損失が出てしまった場合。
●A社・B社ともNISA以外の口座で取引
A社60万円の利益 - B社40万円の損失 = 差引20万円の利益
課税対象20万円…20万円×20.315%=税金4万630円
●A社・B社ともNISA口座で取引
税金0円(NISA取引はもともと非課税のため)
…なんだ、やっぱりNISA口座のほうが得じゃないかと思った人もいるだろう。しかし、片方がNISA口座でもう一方は通常の口座となると、数字は変わってくる可能性がある。
●A社が通常口座、B社がNISAの場合
A社60万円の利益=課税対象60万円…60万円×20.315%=税金12万1890円
(B社はNISA口座での取引のため、損益通算ができない)
12万1890円-4万630円=8万1260円。このケースでは、A社が通常口座でB社がNISA口座だと損益通算ができないことで、両方ともNISA以外の口座だったときに比べて8万円以上も税金が多くかかることになってしまった。
もちろん、このケースでは両方をNISAで取引していたり、A社がNISAでB社は通常口座という組み合わせでも税金はかからないので、「損益通算ができない」ことが常にマイナスの結果になるとは限らない。しかし、通常の口座とNISAと両方で取引している人は、こうしたことがあり得る点は理解しておきたい。
【デメリットその2.損失の繰り越しもできない】
通常の口座であれば、確定申告をすればその年の株や投信の損失を、翌年から3年間は繰り越すことができる。たとえば、2015年に80万円の損失を出して、2016年は60万円の利益を出した場合、損失繰り越しをすれば▲80万円+60万円=▲20万円となるため、2016年に60万円の利益があっても税金はかからない(確定申告が必須)。
しかし、2015年の80万円の損失がNISA口座の取引分、2016年の60万円の利益が通常口座の取引によるものであれば、2016年の60万円には通常通り課税されるため、12万1890円の税金がかかってしまう。
【デメリットその3.代用有価証券としては使えない】
これは、信用取引をしている人にのみ関係のある話だが、ほとんどの証券会社では保有している株式などの有価証券を信用取引の保証金代わりに8掛け程度で利用できる。しかし、NISA口座で保有している株式などは、代用有価証券としては使えない。資金を効率よく使って信用取引を行ないたい人にとっては少々デメリットと言えるかもしれない。
主なデメリットは以上の3点だが、実はいずれも「NISAがきっかけで投資を始めた」という初心者にはあまり関係がない。デメリットを理解した上で、NISAで大きな損失を出さないように慎重に銘柄選びを行なうのが正しい方向と言えそうだ。
2016年スタートのジュニアNISA口座。
払い出し制限がある点に注意して使いたい
2016年からは、新たに0~19歳までを対象としたジュニアNISAもスタートした。日本国内に住む未成年者(口座を開設しようとする年の1月1日現在で19歳以下)であれば、ジュニアNISA口座を開設できる。
通常のNISA口座との主な違いは次のとおり。
1.非課税投資枠は年間80万円(NISAは120万円)
2.金融機関の変更は原則不可(NISAは年1回に限り可)
3.18歳までは原則途中払い出し不可(NISAはいつでも可)
18歳まで払い出しができないことで、子供の将来の資産をじっくり育てることができる。一方で、急にお金が必要になったときに引き出しづらいのはデメリット。もし、途中で払い出した場合には、過去に遡ってジュニアNISAで運用して得たすべての利益に課税されてしまう。
使い勝手は相対的にNISA口座のほうがよいが、子供名義の資産を作るという点ではジュニアNISAには一定の意味がある。世帯の中で、NISAとジュニアNISAの使い分けをしっかり考えることが重要だろう。
持ち越し不可の非課税枠、ロールオーバー時の
取得価格更新など気を付けたいポイントも
最後に、NISAを利用する際に気を付けておきたいポイントをいくつか挙げておこう。
【ポイントその1】非課税投資枠の120万円は繰り越しや再利用は不可
年間120万円の非課税枠はその年のみ利用が可能で、余った枠があっても翌年に持ち越しての利用はできない。また、一度利用した非課税投資枠の再利用もできない。
【ポイントその2】NISA口座を開設する金融機関は、1年に一度変更可能
当初は、一度NISA口座を開設すると4年間は金融機関の変更ができなかった。しかし、制度が改正されて2015年以降は1年に一度金融機関の見直しが可能になった。ただし、変更したい年の非課税枠を一度も使用していないことが条件になる。変更手続きの期間は、変更したい年の前年10月1日から翌年(変更したい年)の9月30日まで。
【ポイントその3】5年後にロールオーバー・移管をした場合は、取得価格が更新される
5年間の非課税期間終了後は、売却のほか、次の非課税期間へのロールオーバー、または特定口座・一般口座への移管が可能だが、どちらの場合も取得価格はその時点での時価で再計算される。特定・一般口座に移管した場合は、再計算が不利に働く(ざっくり言うと「買ったときよりは下がっているのに課税される」など)可能性があることは覚えておこう。
デメリットや注意点ばかりが気になって、これまでNISAでの投資ができなかったという人もいるだろう。しかし、2割超もの税金がかかるとかからないでは大きな差。投資初心者であれば、まずは投信の少額積立から始めたり、10万円以下など投資金額の低い銘柄に投資したりして、様子を見てみるという方法もある。とにかく、「年間120万円までの投資の利益が全額費非課税」というメリットを無視してしまうのは非常にもったいない! 自分に合ったNISAの活用法をぜひ検討して欲しい。
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149本 | 137〜2200円 (約定代金による) |
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。※1 年会費無料のクレジットカードの場合。※2 1約定ごとプランで約定金額240万円までの売買手数料。 |