ソフトバンクとアリババがタッグを組み
新たなパブリッククラウド事業をスタート
改めて言うまでもなく、パブリッククラウド市場は急拡大している。IDC Japanは、国内におけるパブリッククラウドのサービス市場は、2015年に2711億円(前年比39.8%増)。2020年には7346億円になると予測している。
こうした状況に対して「パブリッククラウドは、まだまだこれから。現在の段階では、まだまだ存在していないようなものです」と語るのはエリック・ガン氏。ソフトバンク専務取締役で、SBクラウドのCEOを務める。ソフトバンクグループの新規事業として、パブリッククラウド事業を担うSBクラウドを立ち上げた中心人物でもある。ガン氏はこう続ける。
「海外に比べると、日本のパブリッククラウド市場は、かなり遅れています。立ち上がりに時間がかかるのは、他の市場でもよくあること。私は長くモバイルのビジネスに携わってきましたが、携帯電話の市場もそうでした。ただ、日本では一旦勢いがつくと、キャッチアップのスピードは非常に速い。パブリッククラウドも同様のことが起きると予測しています」
SBクラウドは、そのスピードを加速するエンジン役を担おうとしている。同社は12月に、日本の中堅中小企業を主要対象として新しいパブリッククラウドサービスを開始。まずは、ITインフラをサービスとして提供するIaaS※1事業からのスタートとなる。
(※1 IaaS=Infrastructure as a Service、コンピュータ資源をクラウド上で調達し、サービスとして利用すること)
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SBクラウドは2016年1月、ソフトバンクと中国のアリババグループの合弁で設立された。アリババクラウドは中国最大のパブリッククラウドサービスである。
アリババは自身のEC事業運営を通じて、コンピューティングとクラウドに関するノウハウを蓄積してきた。中国では11月11日の「独身の日」にオンランショッピングの売上が急増することが知られているが、途方もないピーク時の取引を円滑に処理するためには高度なコンピューティング技術が欠かせない。
アリババクラウドとソフトバンクグループのリソースを融合して生まれたSBクラウド。その特長は「分かりやすさ」と「使いやすさ」、そして「安さ」である。ガン氏は次のように説明する。
「既存のパブリッククラウドサービスには様々な課題があります。まず、料金が解りにくい。請求されるまで金額が分からないサービスもあります。これでは、安心してサービスを利用できません。メニューの中からアラカルト方式で細分化されたサービスを選ぶのが一般的ですが、これも料金の解りにくさを助長しています。これに対して、SBクラウドはセットメニュー。A・B・Cのランチの中から、好きなものを選んでくださいというやり方です」