少子化が進み〝大学全入時代〟といわれるなかで「子どもたちのやる気」をどう育てるか。子どもたちのモチベーションを上げる学習塾のあり方と親の姿勢を、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんに聞いた。

 

子どもの話を
ありのままに聞くこと

「子どもたちが〝やる気〟になるきっかけには、内発的動機と外発的動機の二つがありますが、強くて長続きするのはもちろん、自らの中からわき起こってくる内発的動機。でも子育てにおいて、この〝やる気〟を育てることが、最も難しいことかもしれません」

中曽根陽子(なかそね・ようこ)教育ジャーナリスト。2004年、女性のネットワークを生かした編集・取材活動を行う情報通信ネットワーク「ワイワイネット」を発足。教育雑誌から経済誌、新聞連載など幅広く執筆。塾・学校取材や著名人インタビュー経験も豊富で定評がある。著書は『後悔しない中学受験』(晶文社)『子どもがバケる学校を探せ!中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)など多数。

 と語る教育ジャーナリストの中曽根陽子さん。2人の娘を育てた経験からも、その難しさを実感しているという。

「まだ子どもが小学生のときは、学習の習慣をつけさせるなど外発的動機だけでも十分かもしれませんが、中高生になると内発的動機がないと、なかなか〝やる気〟になりません。自我が芽生えて思春期に入り、親子の関係も難しくなります。ただ勉強をしろと言うだけで〝やる気〟を起こさせることはできないし、時には逆効果になります」

 そんなときは子どもの話を聞いて、いったんありのままの感情を受け止めることが大切だという。

「親はとかく結論ありきで子どもの話を聞きがちで、それは本当に子どもの話を聞いていることにはならない。結論を言わずに、黙って聞くことに徹することで、意外と〝やる気〟になれない子どもの本音が聞けたりします。時にはテスト勉強中に寝ていても、なにも言わずに我慢する。結局、困るのは自分だということを子ども本人が理解できるのですから」

 やる気になれない理由として、今なぜ勉強しなければいけないのか、という疑問もある。そんなときは父親の登場だ。「たとえば、受験の先にある生活や仕事を、明確に話してあげる。何のための受験なのか、その結果何が得られるのか。親が社会の姿をきちんと見せてあげることは、子どもたちの内発的動機を促すきっかけになります」。

 そして学習塾を活用することも有効になる。やる気が出ない理由として、学習段階のどこかでつまずいて、勉強がおもしろくなくなっているケースがあるからだ。大切なのは、〝できるところ〟から教材を与えてあげること。集団塾でついていけなくなったときは、わからないところまで戻って学習できる個別指導が適している場合もある。

 学習塾の形態は多様化しつつある。その実態を把握し、子どもの性格や学習進度を見極め、最適な環境を与えてあげることは、親の重要な役割になる。