給与明細を電子化し、メールで送信する業務改善アプリケーションがアジルコアの「月給便」だ。有料ライセンスプランの2015年度の継続率はなんと100%。一度取り入れると、給与明細を配っていたことが、どれだけ時間と経費の無駄遣いだったかを実感できるようだ。

社員の増加に伴い
自社用に開発

阿部兵悦
アジルコア代表取締役

 コンピュータソフトウェア開発をメインに手掛けるアジルコアが「月給便」を開発したきっかけは、自社の合併による社員の倍増だった。それまでは手作業で給与明細を印刷し、封筒に入れて配布していた。しかし、社員が100人近くに増えたため、その作業負担が総務担当者に重くのしかかってきたという。

「ちょうどその頃、給与明細の電子化ニーズがあることを知り、当社の開発拠点がある長野で自社用に開発したのが『月給便』です。実際に使ってみると、負担になっていた作業が一切なくなり、すごく楽になりました。さらに『月給便』を試してもらった会社にもすごく評判がいいので、販売を決めました」(阿部兵悦・アジルコア代表取締役・以下・社長)

「月給便」は、給与明細管理者のPCからメールで明細書を送信、各社員がPCまたは携帯電話で受信するという非常にシンプルな仕組みだ。PCとスマホ向けのメールには、パスワードで保護されたPDFファイルの明細書が添付される。いわゆる「ガラケー」はテキスト形式の給与明細になるが、実際にはほとんど利用者がいないようだ。

「法改正で、2007年から電子化した給与明細も認められるようになりました。『月給便』は発売から約3年半、現在1300ダウンロード(10人までの無料版含む)を突破し、ユーザー企業数は400社を超えています。割安な価格で提供しているのも特徴。同様のサービスの中でも、おそらく最安水準ではないでしょうか」(阿部社長)

増田竜也
アジルコア営業管理グループ
グループマネージャ

 有料ライセンスプラン(1年更新)の場合、例えば100ユーザーまでなら登録費用6万円(初回のみ)、ライセンス料金3万5000円/年と、たしかにかなり安い。この他、ソフトを買い取り、追加費用がゼロのパッケージ買取プランも用意されているが、これも8万円からと格安だ(いずれも税別)。

「シンプルな仕組みと単純明快な効果が大きな魅力なので、むしろ給与システムとの連携など複雑な機能を付けない方がより多くの経営者の支持につながると考えています。また現在、源泉徴収票は紙でなければいけませんし、マイナンバーも必要になるため、あくまでも給与明細を効率的に渡すシステムに徹しています」(阿部社長)

 大規模な連携や更新が必要というと、敷居が高くなってしまう。中小企業にはシンプルで安価なソフトの方が導入しやすいだろう。