ただし、修繕計画も積立金も、多くの場合購入当初は分譲会社が設定している。購入を促進するために、修繕積立金を低めに設定しているケースもあるため、注意が必要だ。計画に問題があったり、そもそも修繕計画を基に積立金が算出されていなければ、いずれ積立金不足が起こる。その結果、設備や建物の劣化が進み、マンションの価値は下がることになる。積立金の状況はマンション管理の質を測る重要な指標の一つともいえる。

 対応策として、修繕積立金を引き上げる方法もあるが、組合員の反発を招きやすい。管理会社に払う管理委託費を少しでも削減し、そのぶん修繕積立金に回せないか検討するのも一つの策だ。特に分譲当初から同じ管理会社に委託している場合、管理費が割高なこともありうる。管理会社のリプレース(変更)も視野に入れた検討が必要だ。

 また同じ国交省の調査によると、約8割のマンションでなんらかのトラブルが発生していることがわかる。内容別では「居住者間のマナー」が最も多い。いくら自分の居室を快適に維持したところで、生活ルールが守られなければ、快適なマンションとはいいがたい。トラブルに対応できる管理規約や管理組合になっているかどうかも、マンション管理のポイントとなる。

管理会社に求められる
高い提案力

 積立金不足や各種トラブルを防ぐには、居住者同士のコミュニケーションが欠かせない。組合活動が活発に行われ、良好なコミュニティが形成されているマンションなら、トラブル対応力も高い。しかし実際は、居住者の高齢化、役員のなり手不足といった理由から、組合活動を十分に機能させるのが難しいところが少なくないのが現状だ。

 こうしたなかで、マンション管理会社には、管理サービスの質的向上や管理委託費の抑制は当然のことながら、長期修繕計画の立案支援やコミュニティ形成サポートなど、個々のマンションの課題を解決する高い提案力が求められている。管理組合も積極的に要望を出し、「口うるさい管理組合」になることが大切だ。

 マンション管理市場での価格競争が激化し、各社のサービス面での差別化戦略も進むなど、管理会社の見直しを考える管理組合にとっては有利な状況にある。まずは現状の管理内容をチェックすることから始めてはいかがだろうか。

週刊ダイヤモンド」2011年2月12日号も併せてご参照ください
この特集の情報は2011年2月7日現在のものです