メガFTA(自由貿易協定)をはじめとする自由貿易が世界的に大きな潮流となる中で、企業はどのような対応をしていくべきなのか。さらに、世界各国をまたがるサプライチェーンが複雑性を増す中で、今後のグローバルな物流改革の方向性についても考察を加える。

メガFTAの活用で生まれる
大きなコスト削減効果

 米国次期大統領にドナルド・トランプ氏の就任が決まったことで、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の先行きが不透明になったが、実は着実に協議が前進しているメガFTA(自由貿易協定)は少なくない。中長期的に、グローバル経済の発展を支えてきた自由貿易の潮流は今後も続くと見るのは、国際貿易投資研究所研究主幹の高橋俊樹氏だ。

国際貿易投資研究所
研究主幹
高橋俊樹氏

1976年早稲田大学大学院経済学研究科修了。日本貿易振興会(現JETRO)で、名古屋貿易情報センター所長、海外調査部上席主任調査研究員、海外調査部長などを歴任。2011年より現職。中央大学および東洋大学非常勤講師。『メガFTA時代の新通商戦略』(編著、文眞堂、15年)、『アジアの開発と地域統合:新しい国際協力を求めて』(共著、日本評論社、15年)、『日本企業のアジアFTA活用戦略』(編著、文眞堂、16年)など著書多数。

「アップルやグーグルなどを擁する米国企業は、自由貿易の最大の受益者と言っても過言ではないでしょう。ある程度の時間がかかるかもしれませんが、米国の国民や政治家もいずれ自由貿易推進の方向に向かうのではないかと考えています」

 グローバルビジネスが発展する中で、製造・販売拠点を海外へとシフトさせている日本企業も多いだろう。A国から材料を調達し、B国とC国で一次部品を製造、D国で完成品を組み立てる、といった複雑なモデルを構築している企業もあるかもしれない。そういった場合に、現在世界各地で進展してるメガFTAを活用することで大きなコスト削減効果が生まれる。

「多くの大企業が実践していることですが、モノの流れを変更してFTA効果を高めた事例は少なくありません。税金や人件費などさまざまな要素を考慮する必要がありますが、関税だけに限れば年間数十億円、あるいは100億円以上の効果を上げている大企業もあります」(高橋氏)

 もう1点、忘れてはならないのが物流である。日本企業の場合、現地法人や担当部門が複数の物流業者から見積もりを取り、安いところを選ぶといったスタイルが多い。しかし、こうしたやり方は部分最適に陥りがちで、全体での手間やコストを考えると逆に割高になってしまっているケースが少なくない。ある企業はこうした物流を一本化することで、約3割の物流関連コスト削減を実現できたという。

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