東日本大震災から半年。大きな打撃を受けた日本経済だが、企業の生産機能は、回復に向けて力強く歩み始めている。一方、今回の震災は、各企業がリスク分散についてあらためて検討する契機ともなった。国内産業は今後、工場の再配置や産業のグローバル化によって、集積構造から付加価値構造へ転換し、知識集約産業へと向かっていく。企業誘致活動においては、環境・エネルギー産業や次世代自動車、航空機産業など、技術革新とともに成長が期待される分野を注視した戦略が求められる。
(日本立地センター常務理事・徳増秀博)
日本立地センターでは、震災2~3ヵ月後、従業員150人以上の全国主要製造業5956社に対し、「震災の被災状況」「電力供給不足に対する影響」「リスク分散・部材調達」について、「東日本大震災の影響に関する緊急アンケート調査」を実施(注)した(回答数943社・15.8%)。初めに集計結果の一部を報告しよう。
被災工場は早期再開進む
リスク分散の動きも
まず、被災状況だが、「震災により被災した工場がある」「原子力発電所事故の影響を受けた工場がある」「取引先が被災して影響」など、回答企業の約50%が震災の影響を受けたとしている。一方「被災、影響を受けた工場はない」との回答は約45%であった。
自動車産業や電子産業は、被災地の工場で生産されていた部品の製造・出荷が止まったことで、自動車や機械製品が生産できない状況となった。ある半導体部品工場の被災は、国内自動車メーカーにとどまらず、海外工場まで影響を及ぼした。
しかし、被災工場の立ち上がりも早く、アンケート実施時点では、現在地での生産再開(予定を含む)を計画している企業が約9割あった。生産再開(一部を含む)と回答した企業は290社で、「すべての生産を再開した」が208社、「一部の生産を再開した」が67社であった(複数回答)。
電力供給不足に対する影響は、「影響はない」が55.1%、「影響があった」は43.5%。影響があったと回答したなかでは「計画停電による影響」がその原因の多くを占めた。
また、今回の震災で大きな問題となったのがサプライチェーンの崩壊である。これによりリスク分散(工場配置の見直しや検討)を行うとする企業は58社(約6.1%)あり、今後の国内外を含めた工場展開が気になるところである。ほかにも、リスク回避を目的とした立地事例が出始めるなど、被災地域以外でもリスク分散の動きが始まっている。
サプライチェーンの崩壊は、企業の部材・部品調達先を拡大する動きを加速させており、348社(約37%)の企業が見直しや検討を行うとし、調達先については、「国内の調達先を複数箇所からさらに拡大する」167社、「国内の調達先を1ヵ所から複数にする」161社、「国内のみの調達を海外に拡大する」84社、「すでに海外調達があったが、今後はさらに拡大する」66社の順となった(複数回答)。新興国の経済回復による市場拡大を背景に、今後、リスク分散を含めた海外展開が進むことが予想される。