ダイヤモンド社では、2014年10月にガートナー ジャパンの池田武史氏にIoTが産業界にもたらす影響とその対応を聞いた。それから3年が経過したが、インタビューの内容はいまなお陳腐化することなく、経営トップやビジネスパーソンに問いかける。日本企業におけるIoT活用は3年間でどこまで進展したか。そして、進展しなかった要因は何か。2017年11月に再び、聞いた。

経営トップ自ら未来を描き
チャレンジする事例が出てきた

●身の周りにあるあらゆるモノが、埋め込まれたセンサーによってインターネットにつながり、それらが相互に情報交換するIoT(Internet of Things)は、今後、産業界に浸透し、産業構造そのものを大きく変える。

●その可能性は無限大で、生活のなかにもビジネスのなかにも、IoTを活用して新しいサービスをつくり出すことができる。大事なのは、その企業が何をしたいのか。

●IoTをいままでの商品にくっつけて、「遠隔監視できます」「リアルタイムで情報が収集できます」ではダメで、製品・サービスにIoTが入っていくと、どう便利になって、何が実現するのか、自社の強みをストーリー化することが大切。

ガートナー ジャパン
リサーチ&アドバイザリ部門
ITインフラストラクチャ&セキュリティ
バイス プレジデント 池田 武史氏

 2014年10月のインタビューで、IoTについて私はこう話していました。あれから3年が経過しました。当時はまだ、多くの経営者にとって、「IoTって何?」「当社に関係はあるのか?」といった状況で、テクノロジーに対する情報感度が高い人が興味関心を示す程度でした。その後、政府がIoT、AI推進に向けた組織やプロジェクトを相次いで発足させるなかで、現在、キーワードとしてIoTを知らないという人はいないくらいに認知度は高まりました。このことは、ある意味、一歩前進と言えます。

 もっとも、3年という短期間で一気に成果が出るものではありません。当時でさえ、IoTは「『過度な期待』のピーク期」にあるテクノロジーで、コストが下がり、安心して採用できるまでには10年かかると見ていましたから。現時点においても、一般的に採用されるまでには5年以上を要すると思われます。IoTを活用して、ものすごい利益を上げているという話は聞いていませんが、国内でも製造、流通、医療などの分野で先進的な事例が見られるようになりました。

 ファナック、コニカミノルタ、コマツといった名前が挙げられるが、いずれも次世代に向けた新しい製品・サービスを開発・提供するためのプラットフォームをつくり、1社単独で何かをやるのではなく、国内外のメーカーや日本のスタートアップなどと連携しながら、エンジニアの採用も積極的に行い、取り組みを進めている点は、成功事例というより、よいチャレンジ事例として高く評価できます。

 もう1つ、共通する特徴は経営トップの高いコミットメントです。コニカミノルタでは、3年前から次世代の自社の在り方を経営トップ自らが悩み、検討を重ねていくなかで、社内外からリソースを集め、ケーパビリティを拡大してきました。経営トップの危機感によるところも大きいのでしょうが、自ら未来を描き、チャレンジしていく姿勢は好感が持てます。