24万部突破のベストセラー『せつない動物図鑑』。「ワニの脳みそはオレオより軽い」とか「コウテイペンギンは家族の顔が分からない」とか、たしかにせつない!そこで、実際に多くの動物に接している飼育係さんに、せつない動物たちは本当にせつないのか、お話を聞きに行ってみました。毎日動物と触れあっていると、せつな~いエピソードがたくさんあるようで……!?(文/山本奈緒子)

取材に応じてくれたのは動物園事業部課長の下康浩さん

2017年「けもフレ」フィーバーに沸いた東武動物公園

 お話を伺ったのは、今年「けものフレンズ」とのコラボレーションで注目を集めたり、クリスマスには「クリぼっち」(恋人のいない男女)をオットセイがハグしてくれるイベントを開催したりと、せつない「人間」までも受け入れてくれる優しい場所、東武動物公園!たしかに、園内には男性のおひとり様の姿がチラホラ……。

園内には「けもフレ」のパネルが。週に何度も訪れるファンもいるのだとか!

 ちなみに動物園といえば、赤ちゃんパンダ、シャンシャンが公開された上野動物園が連日話題ですが、東武動物公園にはパンダはいないため、せつない動物たち同様、せつない思いをしているのでは?と思いきや、「シャンシャンのおかげで動物園が注目されてお客さんが増えてます」と、ちっともせつなくありませんでした!

 それはさておき、東武動物公園で働く動物園事業部課長の下康浩さんを直撃。『せつない動物図鑑』に出てくる、動物のせつない行動は本当にあるのか、聞いてみました。

ワオキツネザルの「俺は臭いぞ」アピールは必見

――まずは、こちらの動物園で目撃可能なせつない行動について教えてください。本には「ワオキツネザルはくさければくさいほど出世する」というエピソードがあるのですが、本当に強いワオキツネザルは臭いんですか?

「臭いといっても人間には分からない程度ですよ(笑)。ワオキツネザルはメスがボスの座につく動物なんですね。そのメスはお尻に臭線があり、縄張り争いのために、よく立木などに臭いをこすりつけています。一方、オスは手首に臭腺があるんですが、それを尻尾につけてブンブン振り回しています。モテたくて『俺は臭いぞー!』と必死にアピールしているんでしょうね。だから動物園に来られたら、けっこうな確率でこの“せつない行動”を見ることができると思いますよ!」

動物園で尻尾を振りまわす仕草を見たら、それは「臭いぞ」アピールです。(写真:東武動物公園提供)

「ジャスティン」という名前のビーバーがいる!?

――『ビーバーはつねに何かをかじっていないと死んじゃう』とあるのですが、動物園でも本当にずっとかじってるんですか? 

「ええ、たしかにかじってますね。ヤマアラシやクマネズミもそうですが、げっ歯類の動物は前歯がドンドン伸びるので、ガリガリかじることで歯を削っているんです。そうしないと前歯が伸びすぎて餌が食べられずに死んじゃいますから。多分、かじることでストレス発散もしていると思うのですが、小さな手で木の枝を持ってカリカリかじってる姿はとてもかわいいので、是非見てみてください。ちなみに、最近ビーバーの赤ちゃんが産まれたんですけど、担当者がジャスティン・ビーバーのファンだったので、ジャスティンと名付けられました。」

取材中も木をかじる姿が。ガリガリという音は遠くからでもよく聞こえました!

――ビーバーのジャスティンですか!?それはファンが喜びますね(笑)ほかにも面白い名前の動物はいるのでしょうか?

「うちで産まれた動物は担当飼育係が名付け親になるんです。だから飼育係の好みがすごく反映されていて。たとえばミーアキャットは全部おでんの具。ちくわぶ、たまご、はんぺん……。マンドリルの担当者は『北斗の拳』が好きで。繁殖した子にケンシロウと名付けたら、今、本当にケンシロウみたいにゴリゴリのマッチョになってます(笑)。また、うちの園は、他所から移ってきた動物の名前を変えることはしていなくて、そのまま以前の名前で呼んでいるんですね。だからキリンは、ティナとナツコという全く統一感のない名前になっています。ティナはアメリカから、ナツコは栃木から来たもので(笑)」

――アメリカと栃木ですか……。(笑)それぞれの名前をチェックするのも面白そうですね。

ラクダのコブの正体は○○だった!?

――『ラクダは100ℓの水を15分で飲みほす』ともありますが、これが本当なら飼育係さんは大変じゃないですか!?

「ラクダは胃袋がすごく大きいので、一度に飲む水の量が多いんです。その代わり、何日も飲まなくても大丈夫なので砂漠で生きられるわけなのですが。もちろん動物園では毎日水をあげますから、一度に100Lもは飲みませんが、それでも真夏などは一度に40Lくらい飲みますね。それよりラクダの“せつない”といえば、コブに入っているのは水ではなく脂肪だと知っていました?あそこに脂肪を溜め込むことで、何日も食べなくても生きていけるんです。その代わり何日も食べないとコブはどんどん小さくなって、最終的にペッタンコになるんですよ。せつなくないですか?(笑)」

名誉のためにお伝えしますと、ここのラクダは立派なコブを携えていましたよ!(写真:東武動物公園提供)

ゴリラに愛された下さん……せつないのはゴリラか人間か?

――他にも本に載っていたエピソードで「これは本当にあるよ」というものはありますか?

「『ゴリラはウソをつく』というもの。うちの動物園には今はゴリラはいないのですが、以前はローラというメスゴリラがいまして。ゴリラは遊んであげないと心の病気になってしまうので、よく檻の外からタオルを入れて、ローラが取ろうとしたら引っ張って取らせない、という騙し遊びのようなことをしていたんです。そうするとローラがタオルを持ったとき、今度は私に同じことをするようになったんですよ。そうして私を騙して『ふふーん♪』と嬉しそうな顔をしていました。これは本にある通り、『ウソをつく』ということを学習した証かもしれませんね」

本当にウソをつくとは……動物園に行ったらまた違った目線でゴリラを見られそうですね。

――たしかにそうですね! 他にも『ゴリラは人間からかぜをうつされる』というせつないエピソードがありますが、そうなんですか?

「チンパンジーもそうですが、ヒト科の動物は人間と遺伝子がほぼ同じですからうつるでしょうね。だから風邪をひいた飼育係は近づかないように気をつけています。お客さんとは距離があるので、さすがにうつらないと思いますが……。」

ゴリラの飼育係は大変なんですね……。

「遺伝子が似ているというだけでなく、人工飼育のゴリラは自分も人間だと思っている子が多いと思いますよ。生まれたときから人間しか見ていませんから。だから私が世話をしていたローラは、多分私に気があったと思います(笑)。私は週に2日しかローラのもとを訪れていなかったんですけど、毎日のように世話をしている飼育係より私を見る目のほうがトロ〜ンとしてましたから」

――『ゴリラは人間に恋をする』、これは新しいせつないエピソードですね!

フラミンゴが片足立ちする理由……下さんはこう分析する!

――ところで飼育係さんに確認したいと思ったのが、『フラミンゴが片足立ちする理由はよくわからない』というエピソード。実際、どうなんでしょう?

「本にも、両足を水につけると寒いからとか水中の寄生虫を避けるためとかいろんな説が挙げられていましたが、水が温かいアフリカでも片足立ちをしているから違うと思うんですよ。うちの園にも30羽ほどのフラミンゴがいますが、夏でも、休み始めるとやはり片足立ちになりますからね。水も清潔だから寄生虫もいませんし……。だから私の見解としては、単に片足立ちのほうがフラミンゴにとってはラクな姿勢だと思うんです。それしか考えられないんですよね……」

――飼育係さんでもよく分からないということは、このせつないエピソードは本当だということですね。

はたしてこの謎に結論が出る日は来るのか?動物園で議論しても楽しそうですね(写真:東武動物公園提供)

続いて、本に載っている以上に実際はせつない!というエピソードはないかも聞いてみました。