ビットコインなど仮想通貨の相場に世間の注目が集まる中、国内外の多くのマスメディアが昨年来、中央銀行によるデジタル通貨発行の議論をたびたび報じている。
ただし、その中には実際以上に雰囲気を盛り上げ過ぎている記事が結構ある。一部の新興国は別にして、金融インフラが整備されている先進国の中央銀行の場合は大半が、中銀デジタル通貨の研究を始めたものの、導入を急ぐ予定は今のところないという、ローキー(控えめ)のスタンスでいる。
この議論に立ち入る前に、まずはデジタル通貨の定義を整理しておこう。物理的な形態を有しない電子的なマネーをデジタル通貨という(銀行預金や日本銀行当座預金も事実上それだが、ここでは含めない)。日常生活になじみのあるデジタル通貨といえば、日本には鉄道会社系電子マネーや小売業者系電子マネーなどが存在する。
中国ではアリババ系のアリペイ、テンセント系のウィーチャットペイ、スウェーデンでは銀行系のSwishが普及している。それらは各国の中央銀行が発行した通貨と常に1対1の交換関係にある。
ただし、それらの運営団体が破綻したら、預けたお金が返ってくるかどうかは状況次第となる。
中央銀行がデジタル通貨を発行すれば、それを保有する人はその中央銀行に対して請求権を持つ。つまり、前述の民間デジタル通貨よりも安全性は高い。中銀デジタル通貨は、民間デジタル通貨と補完関係になれるかどうかといった観点から議論がなされている。