日本企業においても、デジタルトランスフォーメーションが喫緊の課題となるなかで、これをけん引するCDO(Chief Digital Officer、最高デジタル責任者/Chief Data Officer、最高データ責任者)という役職が注目を集めている。CDOのためのコミュニティ組織を目指して創設されたCDO CLUB JAPANの代表理事&CEO、加茂純氏に日本企業におけるCDOと専門組織の現状と課題、欧米の先進事例などについて語ってもらった。

日本でも2017年に発足したCDO 組織
早期に100人規模の組織を目指す

加茂 純(かも・じゅん)
CDO CLUB JAPAN 代表理事&CEO

東京大学理学部情報科学科卒業。イリノイ大学大学院アーバナシャンペーン校コンピュータサイエンス学科AI専攻修士。電通に入社し、インテル、マイクロソフト、アップルコンピュータの日本進出と事業拡大戦略を担当。電通USA ロスアンゼルス支社にてデジタルコミュニケーションズ・ラボを創設、チーフストラテジスト就任。同社退社後、米国シリコンバレーにてHarmonic Communications社を創業。その後PwCコンサルティングを経て、CMOワールドワイド、CMOグローバルタレントを設立。2017年5月にCDO CLUB JAPANを設立し現職

 CDO CLUBは、デジタル分野における経営者のためのグローバルなコミュニティとして2011年にニューヨークで創設された。創設者でありCEO(最高経営責任者)を務めるデイビット・マシソン氏は、トムソン・ロイターを経て、メディア関係の企業を立ち上げるなど、メディとIT双方のキャリアを持つ人物だ。当時、CDO(Chief Digital Officer、最高デジタル責任者/Chief Data Officer、最高データ責任者)という役職は欧米でもあまり一般的ではなかったが、2015年くらいから「インダストリー4.0」や「ディープラーニング」などの革新的技術が注目され始め、FAANG(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグル)をはじめとするディスラプター企業が台頭するなかで、メンバーは数百人レベルから数千人レベルにまで急増した。

 現在、世界各国のメンバーは6000人を超える。伝統的な産業が従来通りのビジネスモデルでは立ち行かなくなってきていることや、デジタルトランスフォーメーションを通じたビジネスモデルの変革が多くの企業にとって死活問題となっていることが背景にはある。また、デジタルトランスフォーメーションの必要性は、一般企業に限らず、政府や自治体においても高まっており、欧米ではデータ資産を効率化し、事業者や住民により利便性の高いサービスを提供する目的で、CDOを導入する政府・自治体も増えている。

 日本でCDOが導入されたのは、2015年の日本ロレアルの長瀬次英氏が最初と言われる。同社には先端的なグローバルCDOが役職として設けられていて、そのもとで各地域にCDOを設置すべく、日本にも導入された経緯がある。その後、昨年にかけてようやく日本でもCDO導入の動きが散見されるようになるなかで、日本企業にとってもデジタルトランスフォーメーションは喫緊の課題であることから、私はデイビット・マシソン氏に掛け合い、CDO CLUB JAPANの創設に向け奔走した。「CDO、JAPANと検索しても、ほとんど(検索結果が)出てこない。組織をつくるのは時期尚早ではないか」というマシソン氏に対し、「日本にはCDOの名称はなくとも、それに近い役職はいる」と説得して、組織化したのが2017年5月のこと。同年11月には一般社団法人化にこぎつけた。

 CDO CLUB JAPANのメンバーは、今年の4月1日でかなり増えたとはいえ、ようやく40人を超えたに過ぎない。グローバルなトレンドから見れば、まだまだ遅れていることは明らかだ。早い段階で100人規模の会員組織にしないと、存在感もないし、コミュニティとして横のつながりも生まれてこない。我々としては引き続きCDOの役割を啓蒙し、メンバーを増やしていくとともに、グローバル組織とも連携しながら、イベントなどを通じて欧米先進国のナレッジを日本に紹介していく。デジタル人材の育成に向けては、英ケンブリッジ大学と提携し、デジタルトランスフォーメーションの教育プログラムも開発中で、今年の後半には、現地にマネジメント層を派遣し、ショートコースを受講してもらう計画だ。