ネットビジネスの急成長に伴い、PayPalは電子決済サービスの世界を牽引する存在へと成長した。日本でも近年の成長は著しく、最大規模のサービス事業者として存在感を高めている。ただし、他の先進諸国に比べると、日本の電子決済市場の拡大は遅い。同社は日本におけるサービス拡充を通じて、企業と個人それぞれに価値を提供しようとしている。
日本は先進国内でも
キャッシュレス決済比率が低い
先進国の中で、日本ほど現金が多用されている社会は珍しい。キャッシュレス決済比率は欧米で4~5割、韓国では9割といわれるが、日本では2割程度。現金の扱いに伴う社会的な膨大なコストもクローズアップされており、政府はこの比率を2025年に4割、将来的には8割に高めようとの目標を掲げている。
東京支店 カントリー マネージャー
曽根 崇氏
この電子決済サービスの市場をグローバルな規模で牽引してきたのがPayPalだ。同社はいま、日本におけるビジネスをさらに加速させようとしている。日本での事業について、PayPal Pte. Ltd. 東京支店でカントリー マネージャーを務める曽根崇氏は次のように語る。
「PayPalは主としてEC分野の電子決済サービスを提供しています。日本における事業は着実に拡大しており、マーチャントと呼ぶ売り手の企業と買い手のコンシューマー、それぞれの数も順調に伸びています」
そんなPayPalにとって、現金主義が色濃く残る日本市場での成長余地は大きい。曽根氏はこう続ける。
「ECにおいても、日本では現金を使った決済を選ぶ消費者は少なくありません。正確な統計はありませんが、クレジットカードやデビッドカードなどの電子決済が約6割、残り4割程度がコンビニなどでの現金を介した決済というEC事業者が多いようです」
EC分野で現金が好まれる理由はさまざまだ。若者を中心にクレジットカードを持っていない消費者もいれば、クレジットカード番号を入力したくない消費者もいる。事業者にとっては未入金リスクのない電子決済が望ましいが、消費者の利便性の観点から現金系の決済手段を手放すのは難しい。こうした課題に対して、PayPalは消費者と事業者の双方にメリットのある決済手段を提供している(図1)。
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「わかりやすいのは、越境ECかもしれません。海外のECサイトで気に入った商品を見つけたとしましょう。消費者は、初めて見つけたECサイトで、クレジットカード番号を入力するのは不安だと思います。PayPalを使えば、クレジットカード番号がEC事業者に渡ることはなく、個人情報などはPayPal側のセキュアな仕組みの中で管理されます」と曽根氏は語る。
他にも、PayPalが提供する価値は多い。例えば、購入した商品が届かない、あるいは販売したが入金されないなど、買い手と売り手双方のリスクを軽減する保護制度。また、ユーザビリティの高さやシンプルな決済フロー、高度なセキュリティを備えた強固なシステム基盤などもPayPalの強みだ。マーチャントとコンシューマーに提供する価値を高め続けることで、PayPalはこの分野のグローバルリーダーとしてのポジションを維持してきた。
越境ECについていえば、日本のEC事業者の多くも関心を寄せている。PayPalによって、消費者の不安を解消できるからだ。そこには、大きなビジネスチャンスがあるはずだ。PayPalは200以上の国と地域でサービスを展開しており、100以上の通貨で決済を行うことができる。越境ECの分野でも、PayPalへの期待は高まっている。