グーグル、アマゾン、マイクロソフトに始まり、ウーバー、エアビーアンドビー、イーベイに至るまで、最も大きく、最も急成長を遂げ、最も強い破壊力を秘めた企業の成功の礎となってきたのは、プラットフォームと呼ばれるビジネスモデルである。プラットフォームは、ヘルスケア、教育、エネルギー、政府といった、より幅広い経済的、社会的領域の変革を担いつつある。本連載では、前世紀の戦略論を大きく書きかえ、世界10ヵ国でベストセラーとなった待望の邦訳『プラットフォーム・レボリューション――未知の巨大なライバルとの競争に勝つために』から、エッセンスを抜粋して紹介する。

パイプラインからプラットフォームへ
移行する圧力が高まっている理由

 プラットフォーム・ビジネスの爆発が起こっている。それが解き放った絶大な力を理解するには、さまざまな市場で長年、価値の創出や移転がどのように行われてきたのかを考えてみるとよい。

 大半の企業が採用してきた従来のやり方は、私たちが「パイプライン」と呼ぶものである。パイプラインの片方には製品(モノ)やサービスの生産者が、もう片方にはそれらの消費者がいて、段階的に調整しながら価値を創出し、生産者から消費者へ移転していくビジネスである。企業はまず製品やサービスを設計し、その後で製品を作って販売先に供給したり、あるいはサービスを提供したりするために、さまざまなシステムを整備する。

 そして最後に顧客が登場し、その製品やサービスを購入する。いたって単純な形式だ。しかも片方からもう片方へと一方向に進むので、パイプライン・ビジネスは直線的なバリューチェーンと説明してもよいだろう。

 近年、こうしたパイプライン構造から、プラットフォーム構造へと移行する企業が増えている。その移行によって、単純な建て付けのパイプライン形態が、生産者と消費者とプラットフォーム自体が可変的に絡み合う、複雑な関係の形態へと変貌を遂げるのだ。プラットフォーム構造の世界においてはタイプの異なる消費者同士が、プラットフォーム上で提供される資源を使ってお互いにつながり合い、インタラクションを行う。

 ユーザーは生産者だったり、消費者だったり、ときには両方の役割を演じることもある。この関わり合いの過程において、何らかの価値を交換し、消費し、ときには共創するのである。このような価値は、(パイプラインのように)生産者から消費者へと直線的に流れるものではない。そうではなくて、プラットフォームが促す関わり合いによって、また、多様な方法や場所によって、創出、変更、交換、消費されるのである。

 プラットフォームごとに、その果たす機能や、集まるユーザーのタイプ、創出される価値はいろいろと異なるが、どのプラットフォーム・ビジネスにも共通する基本的要素がある。

 たとえば、スマートフォンの産業には、現在のところ主要なプラットフォームが2つある。アップルのiOSとグーグルのアンドロイドOSだ。消費者はどちらか一方のプラットフォームと契約すると、そのプラットフォーム自体が提供する価値(たとえば電話に内蔵されたカメラの画像作成機能)を使用できる。

 また、機能を拡張するために、それぞれのプラットフォーム用にコンテンツを制作する開発業者たちが供給する価値(たとえば、アップルのiPhoneでアクセスできるアプリがもたらす価値)も享受できる。そうやって価値の交換が行われるわけだが、それを可能にする価値自体を提供するのはプラットフォームそのものなのだ。

 従来の直線的バリューチェーンから、プラットフォームの複雑な価値マトリクスへ移行することだけに着目すると、それ自体はかなり単純な違いに聞こえるかもしれない。しかし、その意味するところは、とてつもなく深い。ある産業から別の産業へとプラットフォーム・モデルが広がると、ビジネスのほぼすべての側面で革命的変化が起こるのである。そのいくつかを見てみよう。