忙しいビジネスパーソンには休息が必要だ。ビジネスパーソンに適した睡眠時間は「7時間」といわれている。それを下回る日々が続くと「睡眠負債」が蓄積されて健康が損なわれ、仕事のミスが増え能率が下がるという。睡眠負債を生じさせないためには、どうすればいいのか?睡眠研究の第一人者、睡眠評価研究機構の白川修一郎代表に聞いた。

睡眠評価研究機構
白川修一郎代表(医学博士)

日本睡眠改善協議会理事長。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所客員研究員。江戸川大学睡眠研究所客員教授。主な著書に『命を縮める「睡眠負債」を解消する』(祥伝社)などがある。

「仕事が忙しくてほとんど寝ていない」。そう自慢げに語るビジネスパーソンがいる。会社に頼られている自分を演出しているつもりかもしれないが、実は逆効果。睡眠不足のまま働いているというアピールは、「私は将来、会社にも家族にも迷惑をかける恐れがあります」という宣言をしているようなものだ。

睡眠負債による
経済損失は年間15兆円

​​ 世界的なシンクタンクである米国のランド研究所が、睡眠不足による経済損失を調べたところ日本のケースが最も深刻で、GDPの2.92%に相当する約15兆1800億円(1米ドル=110円で換算)という結果が出た。睡眠時間を削ってまで一生懸命働いているビジネスパーソンが実は経済損失を招いているという皮肉な結果となった。

​​ では睡眠時間6時間未満のビジネスパーソンの割合はどれほどなのか。厚生労働省の「平成29年国民健康・栄養調査」では、睡眠時間が6時間未満の成人は男性36.1%、女性42.1%に上り、会社で重要なポジションを占める40歳代では48.5%、女性52.4%に達することが分かった。ビジネスパーソンの半数が睡眠不足に陥っているという現状が見えてきた。