自前でサーバやストレージなどのリソースを持たずにITを活用する「パブリッククラウド」が着実に広がりを見せている。企業経営者としては、クラウドをどう理解し、どのように活用すればよいのだろうか。コストの削減だけではない、ビジネスを推進する武器としてのクラウドの魅力について、アイ・ティ・アールのシニア・アナリスト、甲元宏明氏に話を聞いた。
図 パブリッククラウドの特長
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「パブリッククラウドは、大きく分けて五つの特長があります(図)。コスト削減が重視される中で、初期投資が少ないことに目が行きがちですが、それは特長の一つでしかありません」と、企業システムの実態と動向分析に詳しいアイ・ティ・アールのシニア・アナリスト、甲元宏明氏は説く。
今、成功している企業の多くは、ITをうまく活用している。そこで見られるのは、従来の効率化のようにビジネスを支える存在としてではなく、ビジネスそのものを生み出す武器としてのITだ。
そうした中、クラウドに対する期待も変化しつつある。「コアでも、クリティカルでもない部分にクラウドを適用するのではなく、企業の次の成長を左右する核となる分野への利用を検討するケースが増えています。他社との差別化の源泉となる分野を切り開く、ビジネスプラットフォームとしての活用です」と甲元氏は変化を指摘する。
1年半で100万の
顧客を獲得したビジネス
ビジネスプラットフォームにクラウドを活用して成功した代表例として甲元氏が挙げたのが、米国のスクウェアというベンチャー企業だ。スマートフォンとタブレットPCを用いたクレジットカードの決済サービスの運用を2010年5月に開始し、わずか1年半で加盟店数約100万、1日当たりの処理金額1100万ドルというビッグビジネスを生み出した。