どんなに新しいマンション建物であっても、時間の経過とともに老朽化が進んでいく宿命にある。頃合いを見計らって適切なメンテナンスを行わなければ、そこで長く快適に暮らしていくことはかなわない。特に中長期的な展望に基づいた大規模修繕工事はマンションの長寿化に不可欠だが、注意すべきポイントも少なくない。

 

 20余年前にさかのぼるバブル崩壊以来、マンションは気軽に買い換えるものではなく、可能な限り永住するものという考え方が定着してきた。大半の人々にとってマイホームは人生最大の買い物であるだけに、それが本来あるべき姿ともいえる。そして、それに合わせてじわじわと進行してきたのが、マンションの老朽化だ。

マンションによって
修繕費用は千差万別

 国土交通省の調査によれば、2011年の時点で築30年超に達したマンションは全国で106万戸に上るという。さらに、16年には173万戸、21年には235万戸と、その数は急増していく見込みだ。

NPO法人匠リニューアル技術支援協会常務理事・玉田雄次氏

 マンションは完成した直後から着実に劣化が進んでいくだけに、必要に応じて適切な修繕を施す必要がある。NPO法人匠リニューアル技術支援協会の玉田雄次・常務理事は次のように指摘する。

「個々のマンションごとに修繕にかかる費用は千差万別で、平均的な数値は当てはまりません。1981年以前と以後では耐震基準が大きく異なっていますし、沿岸部、山間などといった立地条件によって傷み具合に差が生じます。さらに一つの建物においても、太陽の直射を受ける方角とそうでない方角では修繕にかかる費用が違ってくるもの。いつ、どこに、どのような工法で建てられたのかによって修繕費用や耐用年数はかなり変わってくるにもかかわらず、一般的にはその事実がほとんど認識されていないのです。しかも、事前に策定されている長期修繕計画が実態に見合っていないケースも少なくありません」

 デベロッパーによってはマンションの分譲価格に割安感を出すために、修繕積立金を低めに設定することもあるという。その結果、実際に工事の時期が迫ってから積み立て不足が露呈することも少なくない。そうなると、金融機関からの借り入れや住民からの一時金徴収、積立額引き上げなどで対処せざるを得ない。先々で困窮しないためにも、マンションの管理組合は前もって長期修繕計画の中身を精査するとともに、自分たちの所有物件において本当に必要な工事の内容を把握すべきだろう。