ここ数年、堅調に推移してきたロジスティクス市場。経済のグローバル化がより一層進む中で、物流に対する経営層の意識変化と、ITによる物流システムの高度化という二つの必要性は、さらに重要度を増している。業界の現状と今後の展望を、船井総合研究所のチーフ経営コンサルタント、廣田幹浩氏に聞いた。

 

システム開発力でも
高い評価を得る

船井総合研究所
チーフ経営コンサルタント
廣田幹浩氏
国内大手物流・ロジスティクス系企業を経て、2006年、船井総合研究所に入社。

「マクロ的に見た場合、国内物流と国際物流の比率が大きく変わってきています。例えば製造業では、5年前は国内7対国際3だった比率が、現在は4対6。強化すべきロジスティクスのバランスが逆転しているのです」

  船井総合研究所のロジスティクスグループでチーフ経営コンサルタントを務める廣田幹浩氏は、ロジスティクスのグローバル化の拡大について、このように語る。

 廣田氏への依頼内容も変わってきているという。数年前、物流に関する依頼は「コスト削減」が最重要課題だったが、今は目先のコストよりも、「会社の将来像を描けるような提案」を求められている。

「重要なキーワードは“納期短縮”です。特に、小売業の場合、物流コストを上げずに納期を短縮することが、今後のロジスティクス戦略を構築する上で欠かせないと考えられています。製造業の場合、大量配送によるコスト削減の時代は過ぎ、国内でも海外でも、中小ロットによる納期短縮ができなければ、グローバルビジネスのスピードに対応できない、という認識が定着しています。どんな業界であれ、低コスト・高品質は維持したまま、納期の短縮を求められているので、現場の競争は非常に厳しくなっています」

小売業で明確になっている
スピード化による成長戦略

 以前は、企業にとって物流はコストであり、効率化による収益増の手段としてロジスティクスが注目され、発展してきた。廣田氏によると、成長を続ける企業は視点を一歩先へ向けているという。

「コスト削減のツール」から「成長戦略に欠かせない武器」へと、ロジスティクスの位置付けが変わってきているのだ。

「最もわかりやすい例がネット通販のアマゾンだと思います。アマゾンが目指しているのは、ネットショッピングを、リアルな店舗でのショッピング感覚に可能な限り近づけること。顧客が注文してから、6時間以内に商品を届けるイメージです。そのためには、徹底的な納期短縮が必要になります」

※海運業は内航海運と外航海運の合計。鉄道、海運(外航)、航空の売り上げには、それを利用する輸送業を含む。
出所:『数字でみる物流 2011』(日本物流団体連合会)に基づいて作成

 ITによって受注・在庫管理・輸配送手配の精度、そしてスピードを上げ、実際の輸配送では物流企業のマンパワーを最大限に活用する。一時的にコストアップすることはあっても、他を圧倒するスピードを実現できれば、必ず収益増につながる。その生命線として、ロジスティクスを位置付けているのだ。

 海外物流の現場でも、求められるのはスピードである。日本の企業が海外展開する場合、問題は現地での輸配送網の確保だが、多くの日本企業が現地物流企業とのアライアンス、またはM&Aを進めている。この傾向は、今後ますます加速していくと廣田氏は予測する。