電子書籍リーダーやタブレット端末が各社から続々と発売され、またコンテンツを提供する電子書籍販売サイトの立ち上がりも相次でいる。市場の拡大が期待されつつも停滞気味だった電子書籍市場が、ここに来て大きな盛り上がりを見せているようだ。
2012年を振り返れば電子書籍の話題が続いた年だった。7月、楽天が電子書籍端末の発売と同時に配信サービスを開始。9月にはグーグルが、11月には米国の市場を牽引してきたアマゾンが相次いでサービスを開始した。スマートフォンやタブレット端末の利用者も増え、電子書籍を読むための環境が整ってきた。特に電子書籍端末は小型・軽量で高画質、1万円以下の低価格で入手でき、試しに買ってみようと考える人も多いのではないだろうか。
かつて日本では、iPadが登場した10年に「電子書籍元年」がうたわれた。しかし実際には業界が期待するほど市場は拡大しなかった。その原因の一つには、端末の選択肢が少なかったことがある。
標準仕様も固まり
コンテンツ供給に弾み
今年になって低価格な端末が一気に出始めたことで、電子書籍市場もにわかに活気を取り戻している。この12年が、本当の電子書籍元年と呼べることになるかもしれない。電子書籍があまり利用されていないもう一つの原因は、コンテンツの不足だ。
その背景には、コンテンツの制作環境が十分に整備されていなかったことがある。これまでは端末メーカーや配信会社ごとに異なるフォーマットが存在し、出版社や制作会社はそれぞれに合わせてコンテンツを制作する必要があるため、手間とコストがかかっていた。
海外ではEPUBという標準フォーマットが普及しているが、縦書きや振り仮名などの日本語特有の表現には対応できていなかった。しかし11年末に公開されたEPUB3では、日本語の表現力が向上。これを基に、業界団体による詳しい仕様策定も行われた。共通フォーマットの整備により、コンテンツ供給の増加が期待される。
楽天リサーチが6月に発表した調査では、4割強の人が「電子書籍を利用したことはないが、今後利用したい」と答えている。端末の普及とコンテンツの増加が、潜在的ユーザーを顕在化させることになるだろうか。