国内の物流総量が減少を続ける中、優良な物流施設を求める動きは加速している。背景には、好調が続くネット通販や物流施設の「大型化」「集約化」を求めるメーカーや物流事業者等のテナント側の意向がある。その最新の動きを追った。

 現在、東京、大阪、名古屋、福岡の4大都市圏で、大型賃貸用物流施設(倉庫)が占める割合は、全普通倉庫の約2%に過ぎない。百貨店やスーパー等の小売業売上高が右肩下がりを続け、物流の総量の減少も続いているが、そんな状況下でも優良な物件を巡る争奪戦は激しさを増している。

即日配達にトライする
ネット通販

 アマゾンやヤフーなどのインターネットモール、またネットスーパー各社は、一部の商品などで即日配達を実施済みだ。そのためには、センターとなる拠点を集約、大型化を図ると同時に、地域ごとに新たな拠点を設ける必要がある。

 さらに、施設の中で仕分けや梱包などを行う「流通加工」の必要性が高まり、それらの機能を兼ね備えた最新鋭の設備を求める流れも加速している。人材が採用しやすく、通勤にも便利なエリアを中心に、物流不動産の人気が高まっている。

 リーマンショック後に低迷していた不動産市況が持ち直してきたことも、物流不動産への関心を高めている。首都圏では賃貸用オフィス物件の賃料が下げ止まりを見せつつある。

 余力ができた開発関連や不動産仲介の業者は、新たな物件の開発や掘り起こしに向かい始めている。とはいえ、首都圏の大型再開発事業は一巡し、個人向けの住宅・マンション販売はまだ芳しくない。

 一方、市況に左右されにくいのが物流不動産だ。長期の賃貸借が望め、安定した収入を確保しやすいというわけだ。

 J-REIT(日本版不動産投資信託)に代表される不動産の証券化の動きも、物流不動産のリースバックや開発を後押しする。大掛かりな倉庫等を自己所有するには資金力が求められるばかりか、資産価値の減損や災害に対するリスクを負わなければならないためだ。

 ところが、所有する倉庫を証券化という形で売却し、賃借として使用すれば、“身軽”になれ、浮いた資金を他の経営資源に投ずることもできる。

 2012年12月、J-REITの物流セクターに新規上場があり、注目を集め、東証REIT指数は11年半ばを底に上昇している。13年以降も物流系の新規上場が続きそうだ。