日本の中小企業の海外直接投資は、増加傾向にある。中でもアジア市場の旺盛な需要を見込んで、販路開拓を求める動きが活発化している。とはいえ、海外でのビジネス展開を成功に導くのは簡単ではない。海外進出には客観的な視点とさまざまなリスクの見極め、対応が必要だ。
長引く日本のデフレ経済を克服するため、政府と日銀は消費者物価指数で前年比2%の上昇を目標に掲げた。他にも円高の是正や大胆な金融緩和措置、公共事業や民間投資による名目GDP3%以上の経済成長戦略など、強気な経済政策が進められようとしている。その一環として、今年1月、政府は、製造業の復活を目指す「日本経済再生・産業競争力強化法」(仮称)の検討とともに、アジアなど海外の経済成長力を取り込む方針を明確にした。
近年、大企業のみならず、中小企業の海外直接投資は増加傾向にあり、2010年度の製造業の海外生産率は18.1%(前年度比1.1%ポイント増)、現地法人の売上高は183.2兆円(同11.4%増)となっている(グラフ参照)。低迷する国内市場や、超高齢社会突入で今後予測される経済の縮小への活路を海外に見いだそうとする企業にとって、政府の方針は力強い後押しとなるだろう。
求められる
リスクと戦略の見極め
出所:経済産業省「第41回 海外事業活動基本調査(2011年7月調査)概要」
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その一方で、海外に進出したものの、事業の継続、展開が困難になり、撤退している企業も少なからずある。それは進出計画の不備や提携企業との対立、本社の経営悪化など準備や認識、見通しの甘さなどの理由の他、海外事業展開には、為替リスクやカントリーリスクなどが付きまとうためだ。
また、言語だけでなく、「文化・商習慣」「法規制・制度」の違いも事業を進める上で大きな障害になる。さらには、現地での体制づくりや人材確保・育成など進出後にも多くの課題が待っている。
中小企業の海外進出は、日本の経済成長に大きな影響力を持っている。昨年8月に「中小企業経営力強化支援法」が施行され、海外事業展開に伴う資金面では公的なサポートが受けられるようになった。市場調査、事業環境整備、リスク対策など、さまざまな側面から海外進出をサポートするサービスも数多く存在する。
それらを利用してどのように海外での事業を成功に導くか。海外での事業展開は、必ずしも現在の経営課題を解決し、成長戦略に寄与するものではないことを知った上で、企業自身による客観的で厳しいリスクと戦略の見極めが必要だ。