メジャーリーガーのダルビッシュ有や、マラソンの高橋尚子ら、有名スポーツ選手がよく身につけている布製のネックレス。あれは、金属のチタンをナノレベルで水溶化したファイテン社独自の素材「アクアチタン」を染みこませた製品(商品名はRAKUWAネック)だ。最近では同様にチタンを含浸させた寝具やスーツ、建材、家具まで、さまざまな分野に広がりを見せている。「ストレス解消効果が高い」とされる、その効能の裏付けとなる興味深い実験結果が、先頃発表された。
アクアチタンを研究助成しているのは、京都府立医科大学の吉川敏一学長が代表を務める「アクアメタル研究会」だ。「アクアチタンを使った製品が本当に『効く』のかどうか、我々研究者にはエビデンス(臨床結果など科学的根拠)がすべて。研究成果を通じ、じっくりその効果を判断していこうと考えた」(吉川教授)
そこでまず3年間、アクアチタンが「研究に値するか」という研究に取り組んだ。「研究のための、プレ研究」のようなものだ。まずは仮説を立て、動物実験により仮説を検証していく。吉川教授と、共同研究者である京都府立大学・青井渉教授が立てた仮説は、「アクアチタンには自律神経のバランスを調整する効果があるのではないか」というものだった。
アクアチタンには自律神経の
バランスを調整する働きがある!?
「自律神経の働きは、動物の生存に必須なもの。例えば攻撃されたらその瞬間、即座に逃げられるように、心臓の鼓動が高まり、血管が収縮して急激に血圧が上がる。こうした時、交感神経の働きが高まっている。ただ、こうして強いストレスがかかった状態が続くと、イライラし、免疫低下や血流障害、不眠が起きることがわかっている。反対に、副交感神経の働きが高まると、リラックスし、物事に動じなくなり、ゆったりと眠れて、免疫も改善する。そうした自律神経のバランスに、アクアチタンがどう作用するかを、マウスで調べていった」(吉川教授)
具体的には、アクアチタンを染みこませたチタンシート(0.94%含有)の上に、カゴを置き、その中にマウスを入れた。対照となる、アクアチタンを含まない普通のシート上のカゴにもマウスを入れ、比較した。自律神経のバランスを計るには、心拍数や血流、血液中のホルモンの値などを調べる。実験の結果、チタンシートの上のカゴのマウスは、ストレスが緩和し、睡眠時間が長くなったことがわかった。
金属をナノレベルで水の中に分散させる水溶化メタル技術はファイテン独自のもので、「アクアチタン」のほか、「アクアゴールド」「アクアシルバー」などの水溶化メタルが生み出されている。現在、世界各国でアクアメタル研究が進行中。ドイツではブラウンシュバイク工科大学のマーチン・コルテ教授が「痛覚神経の反応を緩和する」研究、ニュージーランドではマッセイ大学のデビッド・ローランズ教授が「運動時において関節の可動域を広げる」研究、米国ではUCLAの小川隆広教授が「骨細胞と筋細胞の増殖・分化を促進する」研究を進めている。