企業経営者にとって、最後の大事業と言われる事業承継。どの企業にも、やがて着手しなければならない重要な課題だ。しかし「相談する相手がいない」「いつから着手すればいいのかわからない」「誰に継がせるのか決めていない」などという問題も。じつは、事業承継を機に、経営が危機に陥ったり、いつまでも後継者が決まらずに廃業する事態も。後継者の育成も含めて、早い段階から準備を始めることが、事業承継を成功させるために必要不可欠である。

 

 デフレ脱却と景気浮揚を、税制面からも後押しするアベノミクス。2013年度税制改正で、企業経営の健全な継続性と成長支援を旗印に、事業承継税制が抜本的に緩和される。具体的には09年に創設された「中小企業経営承継円滑化法」の改正だ。

 これは中小企業の後継者が一定の要件を満たすと、非上場の自社株式の贈与税は全額、相続税は8割の納税が猶予されるというもの。現行法では、後継者を先代経営者の親族のみを対象としており、承継後の雇用維持規定や、経済産業大臣の事前確認制度があるなど、多くの前提条件があり、使い勝手がいいものではなかった。しかし、今回の改正で、それらの要件が緩和されて利用しやすくなる。

約7割の企業が
後継者不在の時代

 一方、中堅・中小企業における事業承継の課題として、従来から言われてきたのが、後継者難だ。帝国データバンクの直近の調査では、対象企業27万社中、約7割の企業が「後継者不在」と回答。特に、オーナー社長が65歳を超えてもなお、半数近くが後継者問題を抱えている実態が浮かび上がった。

 社長が高齢になるほど、会社の業績が伸び悩むという現実を踏まえれば、後継者の育成と確保は、中堅・中小企業にとってはまさに死活問題である。

 そうした中、第三者への事業承継を意味するM&A(合併・買収)なども増えている。しかし、みずほ総研の調査では、承継を経験した企業のうち77.7%が親族内での承継となっているなど、実際にはM&Aよりも、まずは親族に継がせたいというのが経営者の本音と言える。

 ところが、中堅・中小企業の場合、対外的な信用力や企業運営のマネジメントでも、オーナー経営者の存在が大きい。たとえ親族内に後継者候補がいても、古参の幹部や銀行など金融機関からの信任を得られなかったり、オーナー経営者を中心とした組織のあり方が、承継をしづらくする要因にもなっている。

 つまり、スムーズな事業承継を実現するには、内外から認められる後継者の育成支援と、組織で企業経営をする仕組みづくりの2つが重要になってくる。