ビジネスの能力に加えて、実践的な英語力を身に付けた人材への需要が、今確実に高まっているという。ビジネスの現場で使える英語力は、海外の生産拠点やマーケットで必要不可欠のツールとなっているのだ。ビジネスパーソンにとって実践英語力は、キャリアアップへの大きな武器にもなる。大手スカウト会社のマネージャーにその実態を聞いた。

 

現場で使える英語力が
求められている

レイスグループ
レイノス スカウト推進部
吉村直樹
ゼネラルマネージャー

 今国内のスカウト・ヘッドハンティング市場では、実践的な英語力を身に付けた人材への需要が急増しているという。大手スカウト会社であるレイノスのスカウト推進部吉村直樹ゼネラルマネージャーは、こう語る。

「実は数年前まで、“英語を話す人材”への需要というのはあまりなかったのですが、この数年でスカウトの案件が急増しています。ビジネスもできて英語もできる人材を、時間がかかってもいいから、スカウトしてきてほしいという切実な依頼が多くなっているのです」

実は少ない英語力と
ビジネス力を兼ね備えた人材

 レイノスのスカウトは、クライアントの社長から直接依頼を受け、その右腕になるような人材をスカウトする。中小企業などでは、海外に拠点を設けるために、現地でマネージャークラスの幹部を必要としており、ビジネス力と英語力のある人材を求めている。従来より、メーカーや商社などからの依頼が多いが、最近ではサービス業や小売業からも、現地の店鋪などでの管理職を必要とするため、依頼が増えているという。海外で現地の人材を採用して使っていくために、実践的な英語力が不可欠になるのだ。だがそうした人材は、意外と少ないのが実情だという。

「例えば英語が話せても、海外での交渉力や営業力、環境に対するタフさ、精神力の強さを持ち合わせている即戦力の人材となると、非常に限られてしまう。もともとそういった優秀な人材は企業が手放さず、十分な報酬を与えて出世コースを約束しているという場合が多い。収入面でのよほどの高待遇か、経営に近い場所で大きな裁量を与えるというモチベーションがないと、面談にもこぎ着けないケースが多く見られます」(吉村氏)

 もっともすべての能力を兼ね備えていなくても、実践的な英語力を備えているだけでも、人材としての価値は大きくなる。これは必ずしも転職やスカウトだけの話ではない。もとより大企業ならば、海外で事業を展開しているケースが非常に多く見られ、英語は公用語と言わないまでも、部署によっては必須項目になりつつあるのだ。英語ができないと、現在の地位すら危うくなってしまうケースも増えているという。

「ビジネス英語を、スコアやレベルで○点以上、○級以上と明記してくる会社もありますが、企業によって求める“英語力”の条件は違います。あるいは『英語力はスコアでは測れない』と言い切り、英語力を伴った仕事の実績を問う企業もあります。要するに海外の現場で、実際に使える英語力を求めているのです」と吉村氏。

 最近は、企業内でも法人向けの講師を呼んで、ビジネス英語の研修を行ったり、TOEICなどのスコアアップの支援体制を整えているケースが増えている。英語教育を取り巻くIT環境も整備され、インターネットを用いた英会話スクールの進出も目立っている。

「英語などの語学は、努力次第で上達するといわれています。むしろ営業力のようなビジネススキルは向き不向きなどがあり、勉強すれば身に付くというものではない気がします。そういう意味でも努力が実りやすい英語を勉強するメリットはありますし、後はやはり、なるべく仕事で英語を使える環境、部署に身を置くことをお勧めします」(吉村氏)