人事に関わるさまざまな課題の中でも、年々重要さを増しているメンタルヘルス対策。不調者を出さない仕組みや環境づくり、不調に陥った人材はしっかりとケアして、無理なく職場復帰を促す体制づくりなどが求められている。

 メンタルヘルス不調は、もはや深刻な社会問題である。

 厚生労働省によると、メンタルヘルス不調をはじめとする精神障害等による労災補償の請求件数、認定件数はここ数年、急増。2012年度の認定件数は過去最多の475件となった。認定を受けた自殺者の数も前年度の約1.5倍に膨らんでいる。

 不調に陥った個人だけでなく、所属する組織全体の士気やパフォーマンスにまで悪影響を及ぼすことが企業にとっての大きな問題だが、近年は労災請求や訴訟のリスクも高まっている。

 仕事や生活への不安、過度なノルマ、人間関係によるストレスなど、さまざまな要因でメンタルヘルス不調に陥る人材は一向に減る気配がない。

 損保ジャパン日本興亜ヘルスケアサービスが、昨年10月にセミナーへの参加企業に行ったアンケート(回答者135人)によると、メンタルヘルス不調者が「増加傾向にある」との回答は全体の32%、「横ばい」と合わせると87%に上った。メンタルヘルス不調者数は増加、または高止まりの傾向にあることがわかる。

 そうした背景から、メンタルヘルス対策に積極的に取り組む企業が増えている。同じアンケートで、メンタルヘルス対策を「実施している」との回答は全体の70%、「実施予定あり」と「検討中」を含めると93%となった。いまやメンタルヘルス対策は、企業として当たり前の時代になったといえそうだ。

 対策の優先重要課題としては、「予防対策」「早期発見・早期対応」「不調者対応・職場復帰支援」を挙げる回答が多かった。これらは、1次予防(未然防止)、2次予防(早期発見・対応)、3次予防(再発防止)ともいわれるが、問題の芽を摘むため、特に1次予防に力を入れる企業が多いことがわかる。

 最近では1次予防の前段階として、ストレスや挫折に強い人材を採用・育成する「0次予防」に取り組む企業も増えているようだ。ニーズの多様化に応え、従来のEAP(従業員支援プログラム)の枠を超えた、新しいメンタルヘルス対策支援サービスも次々と登場している。

 そうしたサービスを活用しながら、メンタルヘルス不調によるリスクを最小限に抑え、組織としてのパフォーマンスを最大化するための対策に取り組むことが求められている。