年率81.9%の成長市場
NASAのエンジニアによる天体探査機、機能性とファッション性を兼備したスポーツシューズ、モダンなリビングチェア。これらはすべて、3Dプリンティング技術を活用して制作されたものです。
パソコンから3次元データを入力するだけで、3次元の立体を自由自在に作ることができる夢の印刷機、3Dプリンタ。ガートナーの調査によれば、3Dプリンタ市場は2017年までに年率81.9%で成長し、世界で57億ドル以上の市場規模が見込まれています。
今、さまざまな産業で3Dプリンタの導入が進んでいる最大の理由は、これまで製品開発にかかっていた時間と費用を大幅に減らすことができることです。
時間や費用といったコストの低減はあらゆる経営活動の大前提ではありますが、近年それが目的化してしまい、「アイデアを形にして検証する」という段階で自由な発想を制約していた面があります。その制約が外れると、どうなるでしょうか。
製品開発はもちろん、マーケティング活動などにおいても、「これまでにない、こんな策をこんな風に展開できるかもしれない」という発想をどんどん試すことができるのです。
アイリスオーヤマと
ライオンの成功事例
「アイデアを形にして」しかも「すぐ試すことができる」。このインパクトは計り知れません。
例えば、アイリスオーヤマの開発部は、設計に時間がかかる家電商品の開発プロセスに2006年から3Dプリンタを導入し、試作品を検証しながら設計品質を高め完成させる手法を採用しています。これを同社は「現品主義」と呼びます。
「解析や試作を外注する従来のプロセスでは、とても市場のスピードに追いつきません。しかし、3Dプリンタがあれば試作を使ってそのスピードに乗っていくことができます」(アイリスオーヤマ家電開発部マネージャー 原英克氏)
現在、アイリスオーヤマの家電部門は前年比200%の勢いで伸びています。国内の家電大手が海外勢に押され業界全体の凋落が語られる中、これは異例の成長率です。「新進のメーカーにとってこの苦境こそチャンス」と捉える同社のように、かつて日本企業の強みだった「現場発」の草の根イノベーションの動きは、今まさに加速しています。
「トップ」「ルック」や「グロンサン」「バルサン」など、確固たるブランド力を持つ化学・生活用品メーカーのライオンも、商品容器の試作品の検証・評価のスピードアップとコスト削減という課題に直面していました。そこで同社研究開発本部が採用したのが、3次元CAD後、金型製作の前段階に3Dプリンタシステムを導入して、思いつく限りのアイデアを現物にして検証・評価する方法でした。
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