2011年3月に東日本大震災が起き、同年7月から3ヵ月に渡って、タイの大洪水で工場が操業停止に追い込まれるなど、サプライチェーンが寸断される事態を招いた。地震、津波、風水害被害を契機に、防災対策、危機対応、事業継続のための対策を考える企業が増えた。事業継続計画(BCP、Business Continuity Plan)を作成する企業は大企業だけでなく、中堅・中小企業にも拡大しているが……。
防災やリスク対応の技術やサービスの進化は目覚ましい。ICT(情報通信技術)の進展に伴い、GPS(全地球測位システム)、ビッグデータ、クラウドサービスなどが、防災、リスク対策にも活用されている。
しかし、中小企業では、BCPへの対応は鈍い。損保ジャパン日本興亜リスクマネジメントが今年1月に発表した「中小企業事業継続計画(BCP)に関する調査報告書」が、そうした現実を裏付けている。
中小企業が取り組んでいる災害対策に関して、「緊急時対応マニュアル」を持っている企業が24.5%、「消防計画」が24.1%で、BCPを策定している企業は16.4%に過ぎない。
BCP対策の有無が
企業評価、業績にも関係
事業活動している企業は、災害時における事業継続への備え、BCM(Business Continuity Management)の意識を高めておく必要がある。長期間、事業がストップすると、顧客や取引先が離れ、廃業の事態に追い込まれる可能性もあるからだ。
さらに、災害、事故に備えるだけでなく、被害に遭った場合に影響を最小限に抑える手法や、被災後の事業再開、復旧をいかに速やかにするかといった対応も重要となる。
地震、台風、水害などの自然災害や、爆発・火災など人為的ミスで起こる災害のほか、従業員や消費者が会社への恨みなどで、食品などに薬物・危険物を混入し、経営危機に陥らせるリスクもあり、こうした事態にも備えなければならない。
BCPを持ち、災害、事故対策を進めることは、信用力を高め、経営実態の把握にもつながり、業績向上にも寄与するはずだ。「喫緊の課題ではない」と後回しにせず、早急にBCP対策に取り組んでもらいたい。