少子化が進む中で、高等教育は大きな転換が求められている。徹底的に鍛え上げた人材を、社会に送り出してきた専門学校は実習や実技の授業を重視する「職業実践専門課程」のスタートにより、その特性をさらに深化させ、“大学全入時代”に、存在意義をますます大きくしている。最新事情を教育ジャーナリストの松本肇氏に聞いた。
松本 肇
神奈川大学大学院博士前期課程修了。著書『大学より専門学校がトク』(2009~2012年度版)のほか、NHK「大人へのトビラTV」(大学よりも専門学校)、週刊ポストの特集「いい専門学校 全国30」などで、専門学校に関する情報を数多く発信。
日本の18歳人口が2017年の120万人を境に減り始め、31年には87万人となる。大学進学者数を推計すると、65万人が48万人になる計算だ。これが「2018年問題」で、4年先を見据えて教育関係者は今、危機感を募らせている。
「学生離れを防ぐ対策として、偏差値が高くない大学は簿記やパソコンなどの実務教育に力を入れ始めました。結果的に就職率が向上し、志望者数の落ち込みに歯止めがかかった例もあります。しかし、中・下位校の一部は改革が遅れ、地盤沈下が進んでいます。就職難民を生み出しているのも、この層だと考えられます」と、教育ジャーナリストの松本肇氏は分析する。
就職できなかった学生の中には、大卒業後に専門学校で学び直す例も増えている。ニートになられるよりはましとは言え、親の経済的負担は大きい。こうした背景から、注目が高まっているのが専門学校だ。
大学の学部3年に
編入学できる「専門士」
「専門学校の利点は、短期間で自分の適性が分かることです。多くは2年制ですから、2年間勉強して合わないと感じれば別の道を選ぶことができる。4年制大学卒業後に新たに別の学校に入るのに比べて、リスクを最小限に食い止められます」
親の世代から見れば、専門学校のイメージは大学入試に失敗した人が仕方なく入る学校という理解かもしれない。しかし、それは認識不足。一定の要件を満たした専門学校は、卒業すると「専門士」の称号が与えられる。短大卒と同等に扱われ、4年制大学の学部3年生への編入学も可能だ。何より、就職に関しては大学と同等、あるいはそれ以上に評価が高い。
文部科学省の「学校基本調査」によると、2013年3月における4大卒の就職率が67.3%であるのに対し、専門学校卒は79.7%。しかも、大卒の就職率がその時々の景気や経済動向に大きく左右されるのに比べて、専門学校卒は比較的安定しているのが特徴だ。