世界一の超高齢社会の中で、高齢の単身・夫婦世帯が安心して暮らせる住まいの整備は急務だ。そこで注目を集めているのが、「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)。建設費の補助や税制優遇などの措置により、資産活用手段としても認知され始めている。

 毎年敬老の日に発表される高齢者についての統計。今年は、団塊の世代の1949年生まれが65歳になり、高齢者人口が3296万人、総人口に占める高齢者の割合が過去最高の25.9%になった。2007年に21.5%を記録して超高齢社会に入って以来、日本の高齢者数は増加の一途をたどる。

 世界一の超高齢社会にもかかわらず、高齢者向け住宅の割合は、欧米諸国に比べ極端に低い。そこで10年に国土交通省が成長戦略として掲げたのが、当時1%だった高齢者向け住宅の割合を20年までに欧米並みの3~5%にすること、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を60万戸まで増やすことだった。

出所:1950~2010年は「国勢調査」、13~14年は「人口推計」、15年以降は「日本の将来推計人口(2012年1月推計)」出生(中位)死亡(中位)推計(国立社会保障・人口問題研究所)より作成

高齢者のほとんどは
自立した生活ができる

 サ高住は、専用のキッチン、バス、トイレ、収納設備を備えたバリアフリー構造で、ケア専門家による「安否確認サービス」「生活相談サービス」が義務付けられた高齢者のための賃貸住宅だ。食事や清掃、洗濯、介護、医療といったサービスが提供されることもある。もちろん必要なサービスを取捨選択できる。

 冒頭の統計によれば、日本の高齢者の就業率は高く、また数年前に比べ趣味や娯楽、学習に時間を費やし、運動などを行う割合が格段に増えてきているという。また、要支援・要介護認定者の割合は、65~74歳で4.4%、75歳以上で31.4%、つまりほとんどの高齢者は、不自由なく日常生活を過ごせる上に元気でアクティブなのだ。時に健康に不安を感じながらも、自立した、あるいは軽度の介護を受けて生活を送りながら人生を楽しむ高齢者が安心して住み続けられる住まいがサ高住なのである。

社会的意義のある
成長市場

 サ高住には、1戸当たり100万円を上限として建築費の10%が補助金として支給される他、所得税や法人税の割増償却率が半分になるなどの優遇処置がある。そのため、多くの事業者が参入し、登録数は年々増えている。人口減少で一般の賃貸住宅における空室率上昇が懸念される一方、サ高住の入居希望者数が増加していくことは想像に難くない。

 ただ、成長市場であると同時に、社会的な意義もある事業であるため、単に建物や設備のハード面を整えるだけで長期運営できるものではない。アクティブなシニアがどのようなサービスを望んでいるかを把握し、地域医療・介護体制と一体となった運営が望まれている。

※内閣府「平成26年版 高齢社会白書」