土地オーナーなどから、積水ハウスが手掛けるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への評価が高まっている。医療機関などからは、指名での受注・実績が増加している。なぜ積水ハウスなのか。「生涯住宅思想」をバックボーンとする多彩な取り組みと実績がある。
いずれも61%、43%、89%の増加──。これは、東京、大阪、神奈川の3都府県で、2010年に比べた25年の75歳以上人口の増加率だ。25年は、戦後生まれの団塊の世代が75歳以上になり、国の社会保障費が急増する時期でもある。
一方で、良質なサービスに支えられた豊かな老後生活を過ごせる高齢者向け住宅は不足している。政府が積極的に整備を進める「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、20年に60万戸という目標に対して、現状は16万戸にとどまっている(14年10月現在)。
土地活用の一つの方法としてのサ高住への参入は、将来的に安定収入が期待できるだけではなく、地域で暮らしてきた人たちに豊かな老後を提供するという社会貢献事業としても注目が高まっている。しかし、安易に参入することにはリスクもある。注目市場であるが故に、競争も激化しているからである。
快適に長く暮らせる
住宅へのこだわり
サ高住には、二つの立場がある。一つは、入居者の立場であり、快適な住まいで家賃に見合う満足を得たい。もう一つが、土地オーナーや医療・介護事業者の立場であり、サ高住の資産価値が保たれ、投資収益が着実に確保されることだ。一見、相反するとも見える立場を両立させることが、長期的に事業を成功に導くことになる。
積水ハウスは、サ高住において全国212棟、8041戸、シェアで全国約5%、東京都内20%もの建築実績を持つ。その背景にあるのが、同社のグループ力による総合コンサルティングだ。
誰もが快適に長く暮らすことができる住まいの提供にこだわる同社は、1970年代から障がい者向け住宅の研究を本格化、81年には日本初となる「障がい者モデルハウス」を建設している。その経験を基に、すべての人が自分らしく心地よく生きていける住まいを目指す「生涯住宅思想」を掲げた。それが現在までの、同社の医療介護事業の理念の立脚点となっている。12年にはブランドビジョン「SLOW&SMART」を打ち出し、耐震性などの安心・安全性能に支えられた“入居者ファースト”の住まいづくりを実践しているのだ。
06年に「ケアリング推進事業部(現 医療・介護推進事業部)」を設け、多様な視点からの住宅の在り方を探ってきた。現在、医療・介護推進事業部は、高齢者住宅や施設を総合的にプロデュースするプロ集団部門として情報収集やニーズ分析、市場調査から研究・開発・市場投入までを一貫して行い、土地オーナーなどの要望に応じた事業提案を行っている。