ビジネスのグローバル化によって、海外出張者がテロや大災害などに遭遇するリスクが増大している。いざ不測の事態が生じると、対応に右往左往する日本企業はまだまだ多い。かたや欧米企業は出張者の安全確保と事態収拾、さらには事後対応を迅速に運ぶための「集中管理体制」を敷いているという。世界最大の法人向け旅行会社でその最前線に立つ、アメリカンエキスプレス・グローバルビジネストラベルのシェレク氏、リーマー氏に聞いた。
海外出張者の所在を
リアルタイムで追跡
編集部(以下太文字):ビジネストラベルマネジメント(BTM)の本質的な課題が変わってきているといわれています。
フィリッペ・シェレク
シェレク 企業活動のグ ローバル化によって、出張者が遭遇するリスクが高まっています。そのためBTMの役割も、従来の各種の予約やコスト管理に加え、不測の事件・事故に遭遇し た時のサポートまで拡大しています。私たちはそうした「Duty of Care」、すなわち企業の責務としての出張者の安全確保をサポートするサービスを全世界で提供しています。
このサービスの提供に当たっては、出張者がいまどこにいるのかを把握することがとても重要になります。ところが飛行機、ホテル、鉄道等の予約情報をすべ て把握するのは容易ではありません。たとえば、アメリカでは大手ホテルチェーンの割合が85%と高く予約宿泊の管理・追跡が簡単ですが、大手チェーンホテ ルの割合が低い欧州では、追跡が難しい場合があります。出張者の現況を把握するにはこうした予約・宿泊情報の統合管理が必要です。
危機が発生した時の機動的な出張者保護対策が必要なのですね。
シェレク 緊急事態への対応の肝となるのは〝スピード〟です。安否確認は現地大使館でも対応するとはいえ時間がかかりますし、そもそも任せるだけでよいものでしょうか。いまやグローバル企業では、社員が世界に散らばっていて、緊急時に、何がその人に起きているのか、いまどこにいるのかを把握したいという需要がとても高まっています。
私たちが提供している危機管理ツール「EXPERT CARE」では事前の手配内容から事件発生現場の近くにいると思われる出張者を即座に割り出し、ショートメールを送って安否確認を求めたり集合場所を指示したり、所在地をリアルタイムで把握できます。先のブリュッセルの自爆テロ事件の際は、顧客企業の出張者3人が現地空港でチェックインしていることが即座に判明したので、個別にメッセージを送ることで15分以内に無事を確認できました。