菅首相は、民主党代表戦中に「一に雇用、二に雇用、三に雇用」というフレーズで、自らの政策姿勢をアピールした。しかし、雇用はそれ自体で自らに対する需要を生み出すことはできない。産業競争力の強化に裏付けられた国内企業活動の活性化こそが、必要条件となる。
本稿では、海外経済との連関を意識しながら、日本経済の現状を俯瞰する。海外経済との結びつきを深め、かつ広げることが今後の経済成長を図る上で欠かせないことを強調する。
ポイントは、内需産業の外需産業化、法人税率の戦略的な引き下げなどを全面に出した「一に産業、二に外需、三に雇用」の政策。キーワードは「トリクルダウン」(trickle down)である。
日本経済は減速しながらも回復
「雇用」も緩やかに改善している
日本経済は、減速しながらも景気回復が続いている。こうしたなか、潜在GDP(=供給能力)と実際のGDP(=需要)の差である需給ギャップも縮小している。内閣府の試算によると、直近7-9月期の需給ギャップは-3.5%となった。このマイナス幅、つまり需要不足幅は2008年7-9月期以来の小ささであり、景気の回復をマクロ面から示している。
この需給ギャップに、半年から1年程度遅行するのが失業率。失業率も2009年半ば以降、緩やかに改善している。需給ギャップが財・サービスの需給、失業率が労働力の需給を表すことを踏まえると、足元で財・サービスと労働力の需給の改善が、同時進行していることになる。
雇用環境の改善はどこまで進むか?
失業率は構造要因が8割、循環要因が2割
ただし、問題はどこまで雇用環境の改善が進むかだ。これは、失業率が循環要因と構造要因によってどの程度説明できるか、という問題に帰結する。