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〈第1部〉
「3つの扉」を通じ、目的志向・全体最適を満たす、
『ビジネス構造化経営』の理論とフレームワークとは?

「ビジネス」の本質とは、誰に(顧客)、どのような価値(商品)を、いかなる内容(業務)で提供し、どのようなリターン(企業価値)を得るかの関係構造を捉えることである。しかし組織が大きくなると、企業はこうしたシンプルな構造を忘れ、全体最適ではなく、組織や業務の部分的な最適化が目的になってしまう。ここでは、「顧客価値を満たし企業価値を最適化する」というビジネス本来の目的に向かうために組織や業務は存在し、それに貢献する「連動」構造としてビジネスを捉え、全体最適のマネジメントを行っていく『ビジネス構造化経営』を提唱する。

企業が目指すべきは全体最適、そして目的志向

●顧客不在の事業構造になっていないか?

 自社の戦略書や計画を見たとき、そこに「顧客」の求めるものを【構造】として捉え、事業認識の基軸にする発想は含まれているだろうか。「顧客に向く」とは、自社の商品ありきではなく、顧客の求めるものに沿って「事業」を捉え、これに沿う形を業務のプロセスやリソースの構成までを貫く発想である(図1参照)。

図1 ビジネス構造化フレームワーク(概要)図1 ビジネス構造化フレームワーク(概要)
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 顧客の求めるものは、図2に示すように、顧客が自らの目的に向かい価値を創出する構造(プロセス)における領域として捉えられ、これを【顧客価値領域】と言う。そして、この単位こそがビジネスの性質を決め、需要を決め、成長を決める単位になる。

図2 「顧客価値領域」と「価値ケース」図2 「顧客価値領域」と「価値ケース」

 企業の提供する商品は、この領域を充足する代替品の1つと位置づけられる。例えば、顧客価値領域が「生産管理機能」領域であれば、生産管理のスキルを持つ人材派遣サービスや生産管理システムの構築、生産管理のASPサービスの提供のいずれもが代替品【商品パターン】となる。

 ここで、「顧客価値領域」を「商品パターン」で細分化した単位を【価値ケース】と言う。「価値ケース」は顧客軸を基軸としてスタートし、そこの商品軸を絡めた需要と供給の両方の視点を含む単位となり、事業の本質的な捉え方にふさわしい。

●顧客価値と株主価値のバランスはとれているか?

 例えば、コストを下げて一時的に業績を上げても、顧客に伝える品質が満たせなくなれば、中長期では業績も落ちるだろう。それは、株主と顧客のどちらかに指向が偏り、最適なバランスがとれていないからだ。

 企業が継続していくためには、長期的な視点で企業価値を生み、顧客に喜ばれ続けることが必要である。そのために企業は、「株主(オーナー)」と「顧客」という2つの【基本ステークホルダー】間の価値創出のバランスの最適な水準を探り、設定する必要がある。これは、企業の顧客に対する位置取り【顧客価値ポジション】と、株主に対する位置取り【オーナー価値ポジション(企業価値ポジション)】が両立するバランスである。

 このとき両者の「価値ケース」は、両者の視点を含むものであり、その基点に適する。

●「個別最適」と「全体最適」は断絶していないか?

 「個別最適」を克服し「全体最適」の改革を行おうとすると、「全体」の概念を置くことがいかに難しいかがわかるだろう。全体とはサプライチューンと呼ばれる単位であろうか、いや、それでは不十分だ。顧客に向き価値を充足する完結単位、つまり「顧客の求める要求の単位」に行き着かなければならない。それは「顧客価値領域」であり、さらに「商品パターン」で細分化した「価値ケース」である。

 「価値ケース」は業務が所属する「全体」の概念と、「基点」の概念を与える。「基点」という概念は、これまでの経営学ではほとんど論じられていないがきわめて重要であり、これをもってはじめて「全体最適」を語ることができる。

「3つの扉」を通じて、正しい方向へ進め

 企業が、課題を克服し変革を継続するには、次の「3つの扉」を通じる経営を行う必要がある。

 まず「第1の扉」は、構成要素が関連しビジネス成果を生む「構造」として、ビジネスを認識し【構造的全体俯瞰】する。「顧客」視点に沿って「顧客価値領域」を認識し、もう一方の視点「商品」を「顧客価値領域を満たす機能・性能価値充足手段」と位置づける。すなわち、顧客軸と商品軸の交点である「価値ケース」を基点とし、両者の関係構造を認識するのだ。

 次に「第2の扉」は、企業戦略を【構造ベース戦略】として策定することであり、さらにそれを個別要素に【目的一貫】させる。つまり、「顧客」「商品」の構造軸に沿って企業の外的環境を認識し、向かうべきターゲットをビジョン化し個別要素に一貫させる。

 そして「第3の扉」は、「構造ベース」で【継続的改革サイクル化】してビジネスの運用を行う。ビジョンを貫き知見を継続させるには、自社の「ビジネス構造モデル」を維持し、戦略前提の変化や、結果の分析を反映していくサイクルを確立すべきだろう。

 こうして目的志向を実現し、全体最適かつ長期最適志向を満たす構造ベースの経営『ビジネス構造化経営』を行うことで、真の「顧客志向経営」「株主価値経営」が完成する。

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