民主党から16人の議員が会派離脱を表明した。与謝野馨氏の経財相起用で自民党の強硬姿勢のエスカレート、社民党の菅政権へのすり寄りと政局が動き出していた。これで統一地方選後に公明党が動けば、菅首相の狙い通りだっただろう(第2回を参照のこと)。しかし、詰めが甘かった。与謝野氏起用は、当然民主党内も動揺させる。党内の造反を防ぐために、菅首相は「解散権」を封印すべきではなかった(第1回を参照のこと)。今更「解散」に言及しても遅い。

 今回は「日本外交」を考える。野党が民主党外交のすべてを批判する。政治の本質は権力闘争なのだから当然のことだ。しかしその中身が、ただ批判のための批判になっている。それは、国家としての自立した意思を持ち、他国にも影響力を及ぼすために戦略的に行動する「大国」を目指すのか、自立した意思がなく、他国に政治的・経済的に依存する「小国」として生きるのかという、日本の「国家像」を決めずに外交を評価しているからだ。

日本と諸外国の関係悪化を考える
――外交方針の明確化が契機に

 日本と諸外国の関係悪化は、野党の格好の政権批判の材料となってきた。批判は主に、相手国とのコミュニケーション不足や人脈不足などで、すべて的外れというわけではない。だが、諸外国との関係悪化は、日本が曖昧にしてきた外交方針を明確化した時に起こったことは重要だ。

 鳩山政権の普天間基地移設問題による日米関係の悪化は、自民党政権と米国が取り決めた「現行案」を破棄した明確な政策転換によるものだ。確かに鳩山政権は、基地移設実現への手法が稚拙だったが、それは明確な意思をもって政策転換を行ったという事実と分けて考えるべきだ。

 また、菅政権は、基地問題を振り出しに戻し、事実上の「日米FTA」である環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加検討の意向を表明するなど、対米協調路線へ転換した。これは、中国・ロシアとの領土を巡る挑発行為を招いたと考えられる。