PCやスマホをコントロールパネル化し、インターネットで実在するクレーンゲーム機を遠隔操作、国内はもとより海外からでも景品を獲得できる“ネットキャッチャー”のサービスを展開しているネッチ。2012年の設立以来、急成長を遂げている。
平島 稔 代表取締役社長
埼玉県富士見市にあるサービスセンター。巨大な倉庫の中に約250台の無人のクレーンゲーム機が並んでいる。あちらこちらで、ネッチのサーバを経由した遠隔操作でアームが動き、景品を獲得しようと音を立てている。動かしているのは、国内や海外に住む“目に見えない”ゲームの参加者。その光景は壮観で、近未来SF映画を想起させる。
ゲーム機の景品は、基本的に非売品であるアミューズメント専用景品。ぬいぐるみやリアルなフィギュアなど、希少価値のあるキャラクター製品が用意されている。その数は毎月450種類以上。うまく獲得された景品は、直ちに発送用の棚に移され、早ければその日のうちに、登録された住所へ無料配送される。バーチャルなゲームではなく、実際のクレーンゲーム機を操作して景品を獲得できるのが最大の特徴である。
登録ID数は
53万を超えた
ネッチの設立は2012年9月。事業の発想はどう生まれたのか、平島稔社長はこう説明する。「長年ゲーム業界に身を置き、ファミコンソフトやアーケード(ゲームセンター)向けのゲーム機の営業を行ってきました。00年ころ独立して、当時韓国で流行っていたネットカフェを仕掛けたがヒットせず、事業の行く末が見えなくなったとき、バーチャルとリアルを融合したゲームが面白いのではないか、とひらめいたのです」。
国内では今、ゲームセンター自体の数が減少し凋落(ちょうらく)傾向にある。その中でも売上げを伸ばしているのがクレーンゲーム機、いわゆる“UFOキャッチャー”である。操作の単純さと、実際に景品を獲得できる手軽さが人気の理由だという。そのクレーンゲーム機を、PCやスマホで遠隔操作できれば、過疎地域にいる人でも簡単にゲームに参加できるようになる。ゲームセンターの商圏はせいぜい半径2〜3キロメートルだが、ネットを経由すれば商圏は日本全国に拡大する。獲得景品は迅速に配送すればいい。それが発想の原点だった。
正式に「ネットキャッチャー」のサービスを開始したのは13年3月。手元の操作と動作のタイムラグなど、技術的な課題をクリアして事業をローンチ(開始)したが、最初の1カ月間の売り上げ(課金)は28万円しかなかった。100万円を超えるのに数カ月かかったが、「毎月少しずつでも売り上げが伸びているのが唯一の希望でした」(平島社長)という。
転機は14年3月、日本最大級の動画サービス「niconico」のニコニコアプリで、ネットキャッチャー「ネッチ」の正式サービスが開始されたことだ。その後、Yahoo!ゲーム向けにも提供を開始、一気に認知度が高まり、台湾・香港・韓国など海外にも広がった。登録ID数は倍々ゲームで増え、現在53万を超えている。