レベル7を認めよう

 わが国の原子力安全・保安院は、4月12日、国際原子力機関(IAEA)と経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)が策定した国際原子力事象評価尺度(INES)に従い、福島第一原発事故の暫定評価を従来(3月18日)のレベル5(事業所外へリスクを伴う事故)からレベル7(深刻な事故)に引き上げたと発表した。

 レベル7はINESが定める最高値であって、1986年のチェルノブイリがこれに該当する(ちなみに1979年のスリーマイル島はレベル5であった)。なお、第一原発から排出された放射性物質の総量は、現時点では、原子炉自体が爆発して広範囲に放射性物質がまき散らされたチェルノブイリの1割程度であると見られている。

 ただし、第一原発内には今なお大量の放射性物質が不安定な状態のままで放置されており、大気中や海中への流出が100%止まった訳でもない。この先、放射性物質の放出量がどこまで増えるかはまだ誰にもわからない。その意味では、チェルノブイリより軽微であると、言い切ることは出来ないのである。私たちは、レベル7という事実、すなわちチェルノブイリに匹敵するかも知れない大事故を起こしてしまったという事実を率直に認めるべきである。

 原子力発電所の事故に際しては、「止める」「冷やす」「閉じ込める」という3段階のプロセスが欠かせないが、今回の大震災に関しては、「止める」ことは出来たものの「冷やす」「閉じ込める」という二つのプロセスに大きな問題が生じてしまった。前回(4月12日)述べたように、引き続き東電を中心に第一原発を「冷やし」続け、かつ放射性物質を事業所内に「閉じ込める」ことに関係者の英知を結集して全力を挙げる他はない。東電が4月17日に発表した工程表によると、第一原発の沈静化にはなお6~9ヶ月を要する模様である。

政府・東電が情報を隠蔽するインセンティブは存在しない

 ところで、第一原発事故に対するわが国政府の見解がレベル5からレベル7へ引き上げられたこと等に関して、一部のメディアでは、「政府・東電は今回の第一原発の事故について、市民に都合の悪い情報を隠しているのではないか」という疑心暗鬼が生じているように思われる。結論を先に述べれば、その可能性は低いと考える。