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出口治明の提言:日本の優先順位
【第3回】 2011年4月19日
著者・コラム紹介バックナンバー
出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

政府は一刻も早く、「東電を民間企業として
存続させる」という決断を下すべきだ

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レベル7を認めよう

 わが国の原子力安全・保安院は、4月12日、国際原子力機関(IAEA)と経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)が策定した国際原子力事象評価尺度(INES)に従い、福島第一原発事故の暫定評価を従来(3月18日)のレベル5(事業所外へリスクを伴う事故)からレベル7(深刻な事故)に引き上げたと発表した。

 レベル7はINESが定める最高値であって、1986年のチェルノブイリがこれに該当する(ちなみに1979年のスリーマイル島はレベル5であった)。なお、第一原発から排出された放射性物質の総量は、現時点では、原子炉自体が爆発して広範囲に放射性物質がまき散らされたチェルノブイリの1割程度であると見られている。

 ただし、第一原発内には今なお大量の放射性物質が不安定な状態のままで放置されており、大気中や海中への流出が100%止まった訳でもない。この先、放射性物質の放出量がどこまで増えるかはまだ誰にもわからない。その意味では、チェルノブイリより軽微であると、言い切ることは出来ないのである。私たちは、レベル7という事実、すなわちチェルノブイリに匹敵するかも知れない大事故を起こしてしまったという事実を率直に認めるべきである。

 原子力発電所の事故に際しては、「止める」「冷やす」「閉じ込める」という3段階のプロセスが欠かせないが、今回の大震災に関しては、「止める」ことは出来たものの「冷やす」「閉じ込める」という二つのプロセスに大きな問題が生じてしまった。前回(4月12日)述べたように、引き続き東電を中心に第一原発を「冷やし」続け、かつ放射性物質を事業所内に「閉じ込める」ことに関係者の英知を結集して全力を挙げる他はない。東電が4月17日に発表した工程表によると、第一原発の沈静化にはなお6~9ヶ月を要する模様である。

政府・東電が情報を隠蔽するインセンティブは存在しない

 ところで、第一原発事故に対するわが国政府の見解がレベル5からレベル7へ引き上げられたこと等に関して、一部のメディアでは、「政府・東電は今回の第一原発の事故について、市民に都合の悪い情報を隠しているのではないか」という疑心暗鬼が生じているように思われる。結論を先に述べれば、その可能性は低いと考える。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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