『週刊ダイヤモンド』4月22日号の第1特集は「『孫家』の教え──起業家に学ぶ10年後も稼げる条件」です。人工知能(AI)やロボットの進化、そして長寿命化の進展によって社会の構造が大きく変わる中、将来も「食べるのに困らない」、そんな未来を切り開く人材を育てるにはどうすればいいのでしょうか。そこで、10年先も活躍していることが確実な若手起業家27人を徹底取材しました。その生い立ちや家庭環境からどのような力を磨いてきたのか。誌面に収まりきらなかった秘話を「拡大版」としてお届けします。第2回は、利用者500万人突破の家計簿アプリを誕生させた、辻庸介・マネーフォワード代表取締役社長CEO(40歳)です。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
祖父に学んだ謙虚の力
「10のことを人に頼んで、1やってもらえたら感謝しなさい」。中学生のころに聞いた、今は亡き祖父の言葉に辻庸介は衝撃を受けた。
実は、辻の祖父は大手電機メーカーの社長を務めた人物。「何万人という社員がいる大会社の社長がそんなことを言うほど、経営者というのは大変な仕事なのか」。そう感じた辻が、30代半ばでマネーフォワードを創業し、今や祖父と同じ社長の立場にいるのだから不思議なものだ。
辻が起業家の道を選んだのはその祖父の影響が大きいという。「医者の子は医者ではないが、人間というのは想像できるものにはなれる」。経営者としての祖父を間近で見てきた辻にとって、今の自分は「想像できるもの」だったのだ。
そして、辻は経営者としてのスタイルも祖父から受け継いだ。